2015年2月24日火曜日

竹富島 ★★★


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八重山諸島に来るのならぜひとも行ってみたい離島として思っていたのがこの竹富島(たけとみじま)。石垣島からフェリーにて10分ほどでいけるこの島は、赤瓦の民家と白砂の道という沖縄古来の姿を保存していることで、観光地としても有名な島である。

八重山諸島の中でも南に位置し、つまり日本で一番赤道に近いと言うために、上空の大気の揺らぎが少なくその為に星空も綺麗に見えるということらしい。また、サンゴが隆起してできた島のため、稲作には適した土壌ではないが、琉球王国が米を納めることを義務付けていたために、稲作を行うために西表島まで船で渡り米を作っていたという。

サンゴが隆起した島であるため山などは無く、島全体がのっぺりとした非常に平坦な地形を持ち、そのために島の中央にある展望台は3階の高さにもかかわらずほぼ島全体を見渡せる。

なんといっても有名なのは、その島の風景。白い砂を敷いた道に石積みの塀、そして赤瓦の民家の中から流れてくるのは沖縄の民謡の調べ。おじいさん、おばあさんを「おじい、おばあ」と呼んでなんとも温かな地域コミュニティが残る島。そんなイメージが観光客をこの島に呼び寄せる。

その風景が残されているのは1986年に制定された「竹富島憲章」。「売らない」「汚さない」「乱さない」「壊さない」の島を守るための4原則に伝統文化と自然・文化的景観を観光資源として「生かす」を加えた基本5原則を中心にこの島の伝統文化を守っていく精神が謳われている。

例えば新しく家を建てる場合は、必ず許可をとり、平屋の上に赤瓦の意匠で無ければいけないという個人の自由よりも景観を守ることに主眼が置かれ、その代わり赤瓦を葺く場合には助成金が支給されると言う。

欧米の都市の中心地では非常に厳しく制限されているこれらの景観に関する条例であるが、ここでは他にも

・窓ガラス等は見えにくいようにすだれなどで隠す
・建物の外に看板などを露出させない
・大規模リゾート開発を目的とした土地買収には応じない
・珊瑚を砕いた白砂の道は、住民の毎朝の掃除によって美しい状態に維持する

など、かなり努力が必要な用件が並ぶ。特に白砂を敷き詰めた道は自分の家の前を毎朝放棄で綺麗に模様をつけるのが慣わしらしく、それをサボっていると「あ、あの家の人は最近サボっているな・・・」とばれてしまうと現地の人は言う。

それほど力を入れて地域の景観を保存しているこの島は、「重要伝統的建造物群保存地区」として国に選定されており、同じように選定されているのは全国でも埼玉の川越長野の妻籠宿岐阜の郡上八幡など、街としての風景が統一されて、美しい街並みを作り出している街である。

そんな竹富島を訪れたかったのは、好きなランドスケープ・デザイン会社であるオンサイトがランドスケープを手がけたホテルがあり、ぜひともこの南の島でどのようなランドスケープと建築の融合を行ったのかを体験してみたかったこと。

そして二つ目は、日本全国の神社を巡っている流れで、本土の神社にあたる信仰の場所である御嶽(うたき)がどのような形で風景の一部として取り込まれているのか、それを実際に見ること。

三つ目は亀甲墓(きっこうばか)と呼ばれる沖縄の埋葬空間であるお墓。本土のものとかなり違った形状をしており、本土の四角柱の塔式のお墓の流れとは違った死者への空間がどのように形成されているのかを理解すること。沖縄では、本土にあるような塔式墓(四角柱形の石の墓)はあまり見られない。

これは古来より洞窟の中に遺体を運んで風に晒して風化させる風習が、斜面に横穴を彫り、その入り口を石などによって塞ぐ形に発展したという沖縄特有の気候に関連する葬祭空間の流れである。

御嶽に関しては、集落内部で外に開かれたタイプのものは中に入って手を合わせることができたが、ホテルの人に聞いても集落外部にある御嶽については地元の人の大切な祭事の空間であるために、足を踏み入れないほうがよいとのことで、その入り口で神域空間を感じ取るに留めておくことにする。

亀甲墓に関しては、こちらも集落外部にひっそりとではあるがかなり分布しているために、道を自転車で進む途中にいくつか風景の中に見つけることができる。風の流れによる風葬を基にしているために、風の流れるような場所におかれ、それが必然的に外に開かれた形になっているのだろうと勝手に想像する。

この島を有名にしたのは蒼井優の初単独主演映画でもあった「ニライカナイからの手紙」。友人が、「いやー、ああいう風に少し方言で訛った演技をすると蒼井優は最高だね」と薦められて見た一作だが、この竹富島に住まい、島を離れた母親から毎年誕生日に送られてくる手紙を支えに生きる少女の成長を描く作品である。

そんな訳で、西表島の様に何か自然の中に入り込んでアクティビティをする訳でもなく、島に流れる風の様にただただのんびりと島の風景と自然を楽しみながら、過ごすこととする。



御嶽(うたき)
御嶽(うたき)
御嶽(うたき)

東集落
東集落




沖縄のお墓


沖縄のお墓


 コンドイビーチ
 コンドイビーチ
 コンドイビーチ
西桟橋
西桟橋
西桟橋
西桟橋
西桟橋
西桟橋
西桟橋




なごみの塔
アイヤル浜
アイヤル浜
アイヤル浜
アイヤル浜
竹富東港

2015年2月22日日曜日

西表島(いりおもてじま) ★★


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昨年の夏に「サウスバウンド」を読んでからやたらと行きたくなった西表島。沖縄ですらなかなか行く機会などないものだから、離島なんでなおさらであるが、今回は思い切って妻と一緒に休暇を利用して足を伸ばしてみることにする。

2013年に開港した石垣新空港からフェリーターミナルまでバスで移動し、フェリーに揺られ約一時間。到着するのは沖縄で本島についで大きいと言われる八重山諸島最大の島・西表島(いりおもてじま)。

大きく分けて西地区と東地区に分かれるこの島であるが、この時期はほとんど予定通りフェリーが動くことは無いという東地区の港について、そのままバスにてホテルへと直行する。

イリオモテヤマネコで知られるように、日本では珍しく亜熱帯海洋性気候に属し、また外部との交流を絶たれ独自の生態系を発展させたこの島は、全体の90%を亜熱帯の森で覆われ日本の秘境100選にも選ばれている自然豊かな地域である。

島の中をうねるように走る川には日本で見られるすべての種のマングローブが見れ、島の特殊な地形であちこちでかなりの高低差の滝を見ることができる。ホテル近くの浜辺で八重山諸島らしい青い海辺を散策していると、亜熱帯地方らしく空の様子が変わりだしあっという間に激しいスコールに見舞われる。

予定していたアクティビティも中止となり、部屋で外の雨の音を聞きながら読書をしながら午後を過ごす。夕方には雨があがり、ホテルが主催するこの島の生態系に関する簡単なレクチャーを聞いて、「イリオモテヤマネコは進化から遅れており、高いところから落ちても猫の様に尻尾でバランスを取れないので頭から落ちることがある」という説明を聞く。

それを聞きながら、外から入ってきた人間が、勝手に外の世界にいる猫という動物と自分を同一視して、それで「進化から遅れている」と決め付けてくるが、こっちはこっちで自分のペースで生きているし進化してるんだから余計なお世話だ。

と自分がヤマネコだったら言うだろうなと思いながら、夜はこんなに暗かったのかと思い出させてくれるような漆黒の闇の中、ホテルで薦められた近くのレストランへと足を運ぶ。

二日目は相変わらず変わりやすい空模様の合間を縫うように予定していた通りにマングローブを楽しみながら川を上るツアーに参加し、自転車で意外に起伏の激しい道を車を気にすることなくこいで、「サウスバウンド」でもモデルにされたとされるヤギの横を駆け抜け、午後には亜熱帯の森の中を歩き滝の上から午前にいったマングローブの川を見下ろし、ガイドの人から「この地が世界遺産に登録されたらここにも人が入ることはできなくなるでしょうね」という言葉を聞きながら、利便さとともに距離を手に入れた人間が、こうしてどんどん自然に入り込み、勝手に手を入れた生態系に途中からそれを人間の視点で保護しようとする身勝手さは、どんな時代にも行われるのだろうと思いながら山を降りる。

独自の生態系を壊さないように、保護はするけど決して人間の手で個体数を増やしたりはしないというこの島の自然への対峙の仕方。そして本で描かれるような純化された離島の生活や風景はやはり同じように残されている訳ではなく、この島なりに利便さとの丁度いい距離を保ちながらもいいものは取り入れ、そして生活もまったく時代にそぐわない姿が保存されているわけではなくやはり21世紀の日本の一部分であるのだと、勝手に自分の想像力の中で膨らんだ妄想を萎ませながらまた島を離れることにする。