2014年3月6日木曜日

「僕達急行 A列車で行こう」森田芳光 2011 ★

「家族ゲーム」(1983年)で知られる森田芳光(もりたよしみつ)監督の遺作となったしまったこの作品。ほとんどの作品で監督・脚本を務めた事で知られる。

そして本作品も本人が脚本を担当し、小さな頃から好きだったという鉄道をテーマに、世間でも認知された感のある鉄道マニア「鉄っちゃん」のほのぼのとした姿を描きだす。

物語はいきなり「わたらせ渓谷鉄道」の車内から始まる。週末を利用して趣味の電車の旅に出てきている二人の若者、一人は大手商社に勤めるエリート会社員役の松山ケンイチと、大田区にある実家の鉄工所に勤める技術者役の瑛太を中心に物語が進む。

といっても、その物語もなんとものほほんとしたもので、全編に渡り如何に鉄道が素晴らしいか、その形、音、風景。「鉄道を愛する人に悪い人はいない」と言わんばかりに、会社でもプライベートでもなんとものほほんとした雰囲気で周囲に愛される二人の主人公。

そして鉄道という趣味がきっかけで大きなプロジェクトをものにし、まったく関係の無い二人の会社にも大きなチャンスが到来する。

恐らく鉄道の様々な魅力を伝えるような映画にしよう。「鉄っちゃん」とくくられてしまい、オタクとしてメディアで扱われてしまっているイメージ対して、その人たちの日常や多様性をも世間に知ってもらおうという意図があったに違いないと思わずにいられない。

確かに日本全国のローカル線や、都心の路線が絡み合う複雑な駅で撮影された映像は、一度行ってみたいなと思わせるのに十分であるが、物語としてあまりに如何なものかとつっこみどころ満載である。

どうにも手の打ち所の無い会社の大プロジェクトが、プライベートの鉄道めぐりがきっかけ一気に商談が成立したり、「下町ロケット」の様な中小であっても最先端の技術を取り入れて研究を続けている様子は見受けられず、川原でキャッチボールと言うなんとものんびりした町工場が、専門家が驚くような技術を持っているなど、やはりのほほんだけでは突破できない曖昧なまま残された細部が気になってしょうがない。

また、アイドルや鉄道を追っかける人の様子がメディアでも何度も放映されるがその度に、毎週田舎に電車で出かけていくには相当な経済的負担を強いられるはずであるが、一体彼らの趣味を支える経済性というのはどんなものをベースとしているのだろうという疑問。

忙しない現代において、時間も当然貴重な資本であるにも関わらず、時間を使い、なおかつお金を使って趣味に向かう。お金はあるけど、とてもじゃないが出かけていく時間が無い。とか、時間はあるけど、出かけるためのお金が無い。という状況は多々あるかと思われるが、あるところを振り切ってしまえば、その両方を兼ね備えるのは現代において意外と難しいことではないのかもと思わされる一作である。

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スタッフ
監督 森田芳光
脚本 森田芳光
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キャスト
松山ケンイチ
瑛太
貫地谷しほり
村川絵梨
ピエール瀧
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作品データ
製作年 2011年
製作国 日本
配給 東映
上映時間 117分
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