2014年3月23日日曜日

アルバムの裏面

歌手の発売するCDなどを見ていると、いわゆるシングルとして発売されるもののほかに、あまりにも多くの曲が作られているのに驚く。

シングルで売り出すような、自信を持てるものを作るのには、相当な時間と労力が必要になってくるだろうと想像する。それにカップリングするB面の曲。そしてアルバムを出す為に10数曲に及ぶ、シングルで売り出されることのない曲。それらをすべて全身全霊を込めて作っているとなると、ものすごいエネルギーになるはずである。

建築なんていうものは、構想から実際の竣工までゆうに数年はかかり、ものによっては10年以上のスパンで取り組んでいくことになる。もちろん並行していくつかのプロジェクトが動くと言えども、世の中に発表できるのは一年に一つや二つ。それが自信を持てるような良いものになれば万々歳である。

そういうスパンで見てみると、歌手も一年に一作でも、「これがどうしても創りたかったんだ」と思えるものだけをつくればいいと思うが、やはりマーケティングを考えるとそんな風にはいかないのだろうと想像する。事務所から、「とにかく売れるためにもっと曲を作らないと」と言われて薄くなっても数を作ることになるのだろう。

本でも一緒。本当に内容の濃いものは、そんなに簡単にポンポン量産できるはずもなく、力のある作家でもせいぜい何年かに一作くらいの割合で本当に納得できるものができるのではと思われる。

もちろん仕事である以上、行った作業に対して報酬が支払われる訳であるから、生活をさせていくために必要な金額を、作業の単価で割っていくと必然的にどれだけやらなければいけないか、どれだけこなさなければいけないかが計算できてしまう。時間を十分にかけて、密度を濃くしていくためには、その単価を上げるだけの価値を何かしら身に着けるか、それとも短い時間の中で濃度を上げていく自らの職業的能力を向上させるかのどちらかしかないのだろうか。

そんなことを思いながらも、アルバムの裏面の聞いたこともないような曲のタイトルに思いを馳せる。

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