2014年1月31日金曜日

「セイジ 陸の魚」伊勢谷友介 2011 ★

その出演者の名前と、なんとなく雰囲気のあるタイトル。そして俳優・伊勢谷友介の監督2作品目ということで、見始めた一作。

恐らく監督が主役である西島秀俊と森山未來に惚れ込んで、「この二人を美しく撮りたい」という思いから始まったのでは?と思ってしまうほど、この二人を中心とした意味の分からないシーンが続いていく。

内定ももらい、社会人として決まったレールを歩いていく時間に飛び込む前に、大学最後の休みを利用して自転車で一人旅をしている大学生の森山未來。どこか分からない山奥の道で車に轢かれ、その縁でなんとも雰囲気のあるドライブイン「475」でひと夏を過ごすことになる。

そこで出会う様々な人間模様。その中心にはなんとも寡黙で重い過去を引きずるセイジ役の西島秀俊。かつて見たアメリカの奇才の描いたなんとも怪しく魅惑的で、日常から少し足を踏み外すことの出来る「ドライブイン」の世界。

常連の誰もが一癖もある普通じゃない日常を過ごし、その思い気持ちを引きずりながらも、その憂さを晴らすためにか、集まりバカ騒ぎし帰っていく場所としての「ドライブイン」。夜の間だけ存在し、朝になるとふっと日常の向こう側に消えてしまうようなそんな場所。

そんな序盤の描き方はそれなりに楽しめ、なおかつ「これが現代日本か?」と思えるほどに自然豊かな風景の中で、登場人物達が非常に美しく描かれているのには納得する。しかし、原作をどう映像化するかという中で、何に焦点を当てて映画化していくかの中で、物語というよりも、どちらかといえば映像作品としての方向に舵をきって行かれ、それが観客を置いてけぼりにするような結末に陥っていったのだろうと勝手に想像を膨らませる。

「忘れていたあの男から企画書が届いたから」と始まる冒頭のシーンがまったく回収されることなく、ただただ魅惑的な雰囲気の中で、魅力的な俳優達の熱のこもった演技を重ねていく。物語に枠組みを与えられることなく、観る者の想像の中にそれぞれの世界を広げようとするのが新しいのかどうかは分からないが、なんとも消化不良な気持ちになるのは間違いない。
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スタッフ
監督 伊勢谷友介
原作 辻内智貴
脚本 龜石太夏匡・伊勢谷友介・石田基紀
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キャスト
西島秀俊
森山未來
裕木奈江
新井浩文
渋川清彦
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作品データ
製作年 2011年
製作国 日本
配給 ギャガ、キノフィルムズ
上映時間 108分
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