月曜日でもなく、土曜日でもない日曜日。そんな日曜日を生きる5人の若者達の姿を描く連作短編集。連作短編というのがこうしたつながりを持って作品になりうるのかと感心させられる手法である。
「日曜日のエレベーター」
「日曜日の被害者」
「日曜日の新郎たち」
「日曜日の運勢」
「日曜日たち」
それぞれの話には必ずある兄弟が出てくる。何か関連がある訳ではないのだが、その兄弟の存在でバラバラのはずの5編が何故か一塊の物語として認識される。
「日曜日」という1日の過ごし方。それが人によってこれだけ多様なものになり、そんな多様な日曜日を過ごす人々がすぐ近くに存在しているというのもまた、「都会」の魅力の一つであろう。
「日曜日のエレベーター」のフリーターの渡辺は、別れた恋人の圭子がエレベーターで一階の収集所までゴミを出しに行っていた姿がなぜか忘れられない。
「日曜日たち」の派遣社員の乃里子は、長年住んだ東京から地元の名古屋へと引越しを決めた独身女性。「15年暮らしたこの街をあとにする。嫌なことばっかりだったわけではないと乃里子は思う。そう、嫌なことばっかりだったわけではないと。」という台詞が、夢を持って東京にやって来て、月日が流れ、結局この街を離れることになる多くの人々の気持ちを代弁するかのようである。
特に印象的なこの二人の主人同様に、全ての主人公は30前後の独身男女。決して不幸ではないのだが、何か満たされないものを抱えながらまた日曜日を迎えていく。そんな人々。
楽しいだけではダメで、やはりその先の人生を考え始める段階に差し迫った世代の主人公達。その時に今住む東京がどういう場所なのか、そして自分の人生がどうなって欲しいのか。
彼らの悩みに耳をかけながら、あーだこーだと言っては一緒に酒を飲む。そんなことを思わさせるなんとも魅力的な主人公達。そしてそんな人が街に溢れているのが東京という大都会。そんな都会の魅力をこういう風に感じさせるのもまた作者の技術だろう感心する。
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