2010年5月14日金曜日

東山魁夷せとうち美術館 谷口吉生 2004 ★★★

















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所在地 香川県坂出市沙弥島224-13
設計 谷口吉生
竣工 2004
機能 美術館
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巨大な土木スケールを持つ瀬戸大橋の架構を脇目に、次第に目の前に広がる穏やかな瀬戸内海を背景に風景に溶け込むように佇むように現れる東山魁夷せとうち美術館
後ろの背景に負けないくらい、遠近法を拡張するかのような引き伸ばされたアプローチの端で立ち上がるコンクリートの腰壁。前面に雨垂れが回らないようにとの配慮の上部の微妙な勾配にふむふむとし、ばっちり入った足元の石の目地ラインに導かれながら、その力線が指し示すエントランスに向けて足を進める。
海へ向けて、層状に重ねられる異なるサーフェイス達。まずは後ろの瀬戸内海の海に染み入るような魁夷の緑と同色のようなスレート壁面。これが後ろにあるべき瀬戸内海の風景を隠すことによって、より一層の意識付けをしてくれる。その緑の下に切り込まれたガラス面。もちろん軒下、ガラス面、床割りとばっちし目地ラインはぐるりと一本の線で身体を取り囲む。そしてガラスの端部が鋼製のスリットとなり、内部への日照をコントロールする。更に内部にはミュージアム・ショップとして利用される平行する木面。何層も重ねられた平行線により、意識は更に奥へ奥へと引き込まれる近代の透明性。
そんな奥へ引き込もうとするベクトルを身体の右側に感じながら、足元の目地ラインの端部に到着すると、お得意の一回左に折れて、小さなスケールのエントランスを抜けて、再度右に折れるというアプローチ。ここではすっかり身体スケールに縮小される建物。
雁行しながら進む展示スペースは、二層分の吹き抜けを持ち、実際よりも高さを感じながら階段を上がり二階部分へ。建物と平行に移動しながら、今度は階段を下りながらカフェ越しに徐々に見えてくる瀬戸内海の風景。非常にコンパクトだが、明確なシークエンスと空間ヴォリューム。もちろんカフェの家具も精度と緊張感のあるディテールに満ち溢れる。
最後はカフェ脇の出口から瀬戸内海の風を感じながら、シャープな庇を見上げながら、ぐるりと建物を巡りながら、エントランス脇のスリットに落ちる光を横目に建物を後にする。
全てのモノが、許容誤差が限りなく零に近づき、そこから少しでもズレたならば違和感を感じるであろう、そんな緻密な空間である。



















































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