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所在地 香川県仲多度郡琴平町
設計 鈴木了二
竣工 2004
機能 神社周辺施設
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照りつける初夏の厳しい日差しの下、果てしなく続くと思われる階段を上ると、徐々に神域へと入っていく。その先に待ち受ける本堂を仰ぎ、左に折れると伝統と近代の新しい形の融合を見せる建築郡が顔を見せる。
現在、早稲田大学芸術学校で御一緒させていただいている校長でもある鈴木了二先生による金刀比羅宮プロジェクト。瀬戸内海を見守る、海上交通の守り神として、古くから親しまれてきた讃岐の名刹。その歴史に加えられた社務所等々の施設である。
授与所棟にて鈴木了二先生に用意していただいた推薦状を巫女さんにお渡しし、見学の旨を伝えると、担当してくださる若い巫女さんがやって来てくれた。ご挨拶をし、見学の旨を伝えると快く説明をしてくださる。内部空間は関係者のプライベートスペースということで、写真の撮影は禁止されたが、階段を上りきった身体から噴出す汗に、心地よい風を感じながらの気持ちのいい見学となった。
分散する建物の前を横切るときには必ず、正対しお辞儀をする巫女さんに習い、ここには沢山の神様がいるんだという神道空間を実感しながら、緑黛殿と呼ばれる斎館棟に向かう。
「既存の遺構と新しい建物を同列に扱いたいと思いました。そして、伝統といったものを、今風にアレンジする姿勢は採りたくないと思った。実際に伝統の中に浸かってみると、結構、自由なんだということも分かったのです」
と鈴木了二先生が言われるように、一見伝統建築の木のオーダーと見間違う鉄骨による柱割り。絶対水平を作り出す鉄による人工地盤に対して、絶対垂直を表す鉄骨のオーダー。その上にのる木組みの伝統屋根組。案内された室内の階段を下りると静寂に包まれる荘厳なプライベート空間。スケールを引き伸ばされた鉄板の構造物。いやがおうにも面を意識されられる空間を巡ると一枚の鉄板だと思っていた部分が厚みを持つマッスであることに気付かされる。
先ほど降りてきた階段を振り返ると、壁から張り出し、上部から吊られて、すれすれのところで縁を切ってあるディテール。同様に上部の人工地盤との縁ももちろん切断されている。その階段の横には地形の力に抗らうように屹立する錆によって赤く陽を受けて輝く一枚の面。半屋外となっているために、
「冬にはこの犬走りに雪が積もって、とっても美しいんですよ」
と巫女さん。
外部という自然に晒されて、現代という流れの時間とは全く異なる時間軸を空間に取り組みながら、静かに佇む一枚の鉄の絵。中は見せていただけなかったが、巫女さんの個室には大きな鏡が設けられていて、踊りの練習や、着物を着るときに非常に重宝しているとのこと。その巫女さんの個室の間には、切り取られた琴平の街が眼下に広がる。風景から視線を上に巡らせると、人工地盤に切り込まれたガラスのスリットからの自然光が柔らかく、そして荘厳に室内に落ちてくる。
巫女さんにお礼を言い、地上に戻って、今度は全面の大階段へ。自然の曲線に重ねられた人口の絶対的水平線。そこに落ちる影。階段から見る、クスの木を囲う永遠に続く現場の様な中庭ごしに再度建物を眺める。絶対的な精度を求める為に、H型鋼を切断して作られたという特殊金物に支えられるガラス・スラブ。
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