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所在地 香川県高松市福岡町2-18-26
設計 丹下健三
竣工 1964
機能 体育館
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国立競技場が一日一般解放される10月10日の体育の日。それは日本が戦後から復興し、先進国への仲間入りを果たした転換点としての、東京オリンピック開会式を記念して。
その1964。オリンピックメイン会場の代々木体育館や、鉄筋コンクリート造HPシェル構造の東京カテドラル聖マリア大聖堂などと共に、遥かかなたの讃岐の地にも、力強いスポーツ建築が現れた建築的当たり年。いや、丹下健三当たり年。いやいや、丹下健三は幾つかを除いて40年ぶっ通しで当たりっぱなし。
高松市内をフェリー・ターミナル方面に車を走らせると、まるで海に浮かぶスケール・アウトしたノアの箱舟が待ち受けてるかの印象。そして近づくと徐々に顔を出す、ワッフルスラブの下面の分厚い量塊。
鉄筋コンクリート造・高張力鋼によるサスペンション構造といわれるが、でっかい梁を、これまたでっかい4本の脚で支えている感じで、よく見るとでっかい昆虫に見えてくる。側面に現れる、恐らく屋根面の雨水を落としていると思われる樋と開口部の意匠も、近未来的な昆虫か、それとも巨大化したピノキオか・・・と見えてくる。
まぁ、なんといってもワッフルスラブの下面の格子状のリブの力強さ。
「サーフェイスには表と裏の二面がある」
と、昔AAの授業でアンドリュー・ベンジャミンが言っていたのが思い出されるが、水平面において、自身の上部に反り上がるサーフェイスの裏を見るときに、一体どのようなスケールを当てはめるべきか、という問いに対しての見事な回答である。
そして第二のピークは、このスラブの上にのっかるHP曲面の屋根に覆われる室内大空間。代々木体育館と同様の吊り屋根構造であるわけだが、ここでも構造力学の見えない力を意匠に昇華させ、天幕の下に覆われるかのような一転優しい空間。外と中で全く異なる二枚の変形した水平面の扱いによって、構造と意匠、内部と外部の面の反転を見事にコントロールして、劇的な空間を構成する名作。
たまたま、小学生の体操大会を行っていたのだが、ふわりと包む優しい天井面の下、クルリクルリとバック宙、バック転を決める少女達を見ていると、不思議の国のサーカスでも見ている気分になってきた。
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