2015年1月1日木曜日

杭州 ★★★★★



「元日休みを利用して、一緒に杭州に行って西湖を自転車で巡らないか?」と仲良くしてもらっているご夫婦から誘われて、妻に聞いてみると「興味がある」というので、大晦日ギリギリまで働いて紅白を見て、元日の早朝の飛行機で杭州に向かうことにする。

この杭州。「杭」の方の杭州と言われるように、日本語では「広い」方の「広州」と発音が被るためにややこしいが中国語では杭州は「Hangzhou」で広州は「Guangzhou」と全く違う。

中国の「六大古都」にも選ばれている歴史と文化を感じさせてくれるこの都市は現在の浙江省の省都。かつて南宋の首都であった臨安(Lin An)がその元となっている。ややこしいが、現在の杭州の西側には臨安市と呼ばれる行政区があるが、歴史上の臨安は現在の杭州であるという。

浙江省(せっこう)は「Zhejiang」と発音され、略称は「浙」の文字が使われる。この略称が車のナンバープレートに表示されているので、街中を行く車のプレートには「浙」の文字が溢れる。

中国の「六大古都」と言われても、相当に歴史好きの人でなければピンと来ないであろうが、下記の六つの歴史的重要な位置を占める都市を指す。

西安(かつての長安)・北京・南京・洛陽・開封・杭州(かつての臨安)

それぞれが何故重要な意味を持つのかもまた面白いが、元々は「西安・北京・南京・洛陽」という誰に聞いても挙がるであろう都市をもって「四大古都」としていたのに、1920,30年代に「開封・杭州」が加えられという。さらにその後の、90年代には「殷」の重要な都市であった現在の「安陽」を、00年代には「商」の重要な都市であった現在の「鄭州」を加え、現在では「八大古都」として、「西安・北京・南京・洛陽・開封・杭州・安陽・鄭州」が数えられうという。

旅の中でこういう方面にやたらと詳しいメンターが「杭州は世界でも最も古く観光地として開発が進んで都市であり、その為に西湖が整備されたといっても過言ではない」と教えてくれる。上記の「古都」に入れ込まれたのも、観光地としてのブランディングがあったことは違いない。

首都とされた南宋時代の13世紀には世界で最大の都市として君臨したこの杭州。現在の市区人口は2008年のデータで677万人。これは千葉県より多く、埼玉県より小さい規模となり、日本の都道府県に組み込まれたら、東京、神奈川、大阪、愛知についでの5番目の規模となる。その規模が見て取れるように、市の中心部にはかなりの数の高層ビルが立ち並ぶ風景が広がっている。

地理的には北に南京や蘇州といったこれまた歴史的に重要な役割を果たしてきた都市を持つ江蘇省(こうそ、Jiangsu)と上海市を持ち、西には世界遺産にも登録されている風光明媚な黄山をもつ安徽省(あんき、Anhui)や江西省(こうせい、Jiangxi)。東は海に面しており、南には知名度の高い福建省(ふっけん、Fujian)に囲まれている。

そして何と言っても隋時代に本格的に整備され、610年に完成した北京から杭州までの2500キロを結ぶ大運河である京杭大運河(けいこうだいうんが、Jīng Háng Dà Yùnhé)の終着点であり、大陸を縦断する重要な起点として役割を果たしてきた。

そんな地理的、歴史的な意味を持つ杭州の地には歴史の中で多くの文化人がこの地に集まり、重要な文化遺産を残している。彼らを惹きつけた要因の一つとしてあげられるのが、この街のシンボルとなっている西湖(せいこ、Xī Hú)。古来より様々な故事が語られてきたこの天然の湖は世界遺産にも登録され、西湖十景(せいこじっけい)と呼ばれる10の有名な風景と共に、今でも多くの観光客を集めている。

語りだしたら霧が立ち込める西湖の風景の様に、終わりが感じられなくなるのがこの杭州という街。建築においてはこの地に拠点を置き、中国人建築家として始めてプリツカー賞を受賞した王澍(ワンシュウ、Wang Shu)が多くの作品を残す都市でもある。

何といっても、オフィスが仕事を止める国家的な休日ではないと、何かしらプロジェクトのやりとりが発生してしまい、心からリラックスして休暇を楽しめることができない日常を送っている身にとっては、こうして数日間だけでも、心から仕事から解放されて、一観光客として好きなだけ非日常の風景と空間を楽しめることを本当に待ち遠しい。

どんな風景に出会える街なのかと期待を膨らませながら、冷え込む早朝5時の北京の暗い街でタクシーを拾うことにする。

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