一年で一番山が美しい時期がやってきた。噴出す汗を気にして、重い荷物を持って長城の上を歩いていくのは流石にきついということで、暑い季節は避けていたが、そろそろハイキングに参加しようと思っているころに、ハイキングに誘ってくれたドイツ人の友人と食事に行くと、
「万里の長城のハイキングは北京魂だ(Spirit of City of Beijing!)」
と言うのを聞いて、上手いことを言うなと思い重い腰を上げて参加することにする。クローゼットの奥から登山グッズを引っ張り出して、ハイドレーションを洗い、弁当用におにぎりとゆで卵を用意し、久々の山へ向けて準備をする。
今回は一人での参加になるので、水分はペットボトル一本にし、弁当の内容もコンパクトにし重量を減らすことに心がけ、遅刻しないように近くの集合場所に8時前に到着する。何度か参加していると、自然に顔見知りのメンバーも出来てきて、バスの周りで始めてのメンバーとも挨拶を交わして待つこと20分ほど。総勢20名での出発。
今回は北京の北部、怀柔区(huáiróu)にある、万里の長城の一部、箭扣 (jiàn kòu)长城と呼ばれる場所で、道から一時間ほどブッシュのなかを掻き分けながら進み、壁に到着したら今度は壁に沿って山を歩き、目的地である9-Window Towerと呼ばれる、長城の監視塔まで歩いてランチを取り、その後別ルートで壁を戻り、逆側へと登っていき途中から壁を離れて山を下りていく、5時間くらいのコースという。
一時間半ほどで現地に到着し、いつも通り説明も無く各自歩き出す準備を整え、準備のできた人から先に歩いていく。常連さんは既にコースが頭に入っているらしく、ぺちゃくちゃおしゃべりをしながらとっとと先を進む。今回のハイクはルークというベルギー大使館に勤務するベルギー軍所属の人の良いおじさんが隊長ということで、先頭をいったり、最後尾をケアしたりと機敏な動きを見せてくれる。
前回の我々の様に、とんでもなく隊から送れるメンバーもでなく、大体同じようなペースでルートを進む。2-3人のメンバーで参加している人たちもいれば、一人で参加している人もいて、前回顔見知りになったメンバーや今回はじめて顔を合わせるメンバーなどと会話をしながら先を進む。
壁に到着し、「ここからは結構険しいルートになる」という先には、壊れかけた壁にそって、崩れやすい石に覆われた急な坂道。手をつきながら、直径1センチほどの樹木がこれほど心強いものなのかと支えにしながらなんとか登っていく。一緒に話ながら登ったオーストラリア人の男性は、ジーパンにスニーカーという軽装ながら、なんとも軽やかに登っていく。「やはり体重の違いか・・・」と思いながら、水分を補給しながら足を動かす。
なんとか遅れを取ることなく、ランチを取る9-Window Tower到着。足場の何もなく、ただレンガを何個もついで足場にし、そこから身体を持ち上げるようにして登る塔の上からの眺めは絶景。食欲はあまり無く、タッパーに入れてきたパイナップルとオレンジだけを口にほう張りなんとか後半への体力の回復に努める。
「こんなに忙しなく歩いていって楽しいものだろうか・・・」と疑問に思うくらいの早いペースで歩いていくメンバー達。万里の長城自体が、北からの野蛮人達に対する防御という意味から構築され、進入を防ぐためにピークを沿うようにして作られているので、必然的にそのハイクは下っては登っての繰り返し。
その度に「これを作った人間はクレージーだ」と思わずにいれらない。足を止めて先を眺めると、はるか向こうにもうっすら見えるその人工物の果てしない線。2000年以上も前にいったいどんなクレージーな人間が、これを作ろうと思ったのかに想像を馳せるとやはり飛んでもないと思わずにいれれないし、一体どこでそれを止めようと決めたのか?その決断の難しさに思いを馳せながら足を前に進める。
人気のスポットらしく、今回は多くの中国人ハイカーとすれ違う。予定よりも順調に進み、15時前にはバスに到着。冷えたビールと残った弁当のおにぎりとゆで卵をほお張りながら、今度は中国人グループのハイキングにでも参加してみようかと思いを馳せる。
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