2013年9月15日日曜日

「日本庭園・鑑賞ガイド 庭がよくわかる本 庭に隠された約束ごと」 野村勘治 1994 ★★

建築家。

という職業をしているだけで、京都にいって寺院や庭園を廻るのが、安易にも何故かその仕事の糧となり、OLさんが3人くらいでキャッキャッいいながら内容の薄いガイドブック片手に廻る二泊三日旅行とは意味が違うように聞こえてしまうがそんなことはない。

見るものにテーマを持ち、意識を持って参観し、見たものを改めて整理し、自分の中で消化する。その中から見えてきた新しい意味を自分の日常の中へと持ち帰る。そうしていつか、何十年か先かもしれないが、どこかでそれが本当の意味での糧となって設計に反映される。それほど簡単に理解できたり、習得できるものではないのが京都の空間。

興味があるから訪れるのはもちろんだが、どんなに興味があっても事前に細かく調べることはできやしない。実際に足を運んでみて、そこで感じたものが何だったのかに興味が湧き、帰ってから時間をかけて理解しようとする。興味に奥行きを与えていく。

そんな訳でこの夏に様々なところで訪れた庭園。建築を職業とし30代も中ごろに差し掛かれば作庭の基本くらいは身についていてもよさそうだが、それはどっぷりと日本建築に関わる仕事に関わってこなかったからと言い訳をし、興味を持ったが始まりということで、いろいろと調べる手始めに、自宅の本棚から見つけ出したこの一冊。

やはりその時に読まなくても、とにかく本棚にコレクションとして残しておくことの意味に改めて気がつきながら、めくるページには、少なからず今回訪れた名庭園が紹介されている。

体系だてた説明というものではなく、非常に簡単な導入本ではあるが、それでもズブの素人の今の自分にはうってつけの一冊。何よりも巻末に名庭園リストとして掲載されている写真の全国の庭園がなんと84も載っている。

これはぜひとも自分のマップにマッピングしなければいけない・・・ということで、ネット上でそのリストを探そうとするがどうにも見つからず、しょうがないので、自分で打ち込むことにする。この作業が結構時間を要する。寺や神社に付属するものが多いので、必然的に読み方も複雑で簡単な変換では出てこない名称のものが多くなる。

しょうがないので、ひらがなで打ち込み、所属件名と一緒にネットで調べていく作業。「これでまた行かないといけない所が増えてしまうじゃないか・・・」などと思いながら、抑えることの出来ない嬉しさがニヤニヤと口元に出てしまいながらリストを完成させていく。

その姿を見た妻が、「なんだか楽しそうだけど、何してるの?」と聞いてくるので、「こういう手間を超えることで効率という近代のベールで見えなくなったもの探す地図をつくっているんだ」と、如何にもかっこよさげに答えると、「良く分からないが楽しいならいいや」と返される。

マッピングされていく目的地でいつか、その妻から「まだ次があるの?」と文句を言われる日も遠くは無さそうだと想像を膨らませながらまた一つ目的地を追加する。

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名庭リスト
青森
・瑞楽園(ずいらくえん)
・盛美園(せいびえん)
・ 藤田記念庭園(ふじたきねんていえん)
岩手
・毛越寺(もうつうじ)
栃木
・古峯神社(ふるみね)
東京
・小石川後楽園
・東京天理教館
・明治神宮
・六義園
神奈川
・三溪園(さんけいえん)
・箱根美術館
石川
・兼六園(けんろくえん)
静岡
・龍潭寺(りゅうたんじ)
愛知
・名古屋城旧二の丸
三重県
・北畠神社(きたばたけじんじゃ)
滋賀
・居初氏庭園天然図画亭 (いそめしていえん てんねんずえてい)
・旧秀隣寺庭園(きゅうしゅうりんじ)
・玄宮園(げんきゅうえん)
・大池寺(だいちじ)
・福田寺(ふくでんじ)
・楽々園(らくらくえん)
・蘆花浅水荘(ろかせんすいそう)
京都
・京都府立総合資料館 
・銀閣寺
・金地院(こんちいん)
・三千院有清園(ゆうせいえん)
・橋本関雪記念館(はしもとかんせつ)
・平安神宮神苑(へいあんじんぐうしんえん)
・法然院(ほうねんいん)
・曼殊院(まんしゅいん)
・無鄰菴(むりあん)
・金閣寺
・孤篷庵(こほうあん)
・正伝寺(しょうでんじ)
・真珠庵(しんじゅあん)
・大仙院(だいせんいん)
・大徳寺
・龍源院(りゅうげんいん)
・京都御所
・仙洞御所(せんとうごしょ)
・本法寺(ほんぽうじ)
・青蓮院門跡(しょうれんにんもんぜき)
・東福寺
・普門院(ふもんいん)
・二条城二の丸
・旧嵯峨御所(きゅうさが) 大覚寺大沢池
・退蔵院(たいぞういん)
・天竜寺
・東海庵
・法金剛院(ほうこんごういん)
・龍安寺(りょうあんじ)
・真如院(しんにょいん)
・西本願寺対面所庭園(にしほんがんじたいめんしょていえん)
・桂離宮
・西芳寺(さいほうじ)
・醍醐寺三宝院(だいごじさんぽういん)
・酬恩庵(しゅうおんなん)
・浄瑠璃寺(じょうるりじ)
・慶沢園(けいたくえん)
・正覚寺(しょうかくじ)
奈良
・依水園(いすいえん)
・平城京左京三条二坊宮跡庭園(にぼうきゅうせき)
・大和文華館(やまとぶんかかん)
島根
・足立美術館
・出雲千家(いづもせんけ)
・櫻井邸(さくらいてい) 櫻井家・日本庭園
・万福寺(まんぷくじ)
岡山
・岡山後楽園
・頼久寺(らいきゅうじ)
広島
・縮景園(しゅっけいえん)
山口
・桂氏庭園(かつらし)月の桂の庭
・漢陽寺(かんようじ)
・常栄寺(じょうえいじ)
・宗隣寺(そうりんじ)
徳島
・観音寺(かんのんじ)
・千秋閣(せんしゅうかく)旧徳島城表御殿庭園(きゅうとくしまじょうおもてごてんていえん)
香川
・栗林公園(りつりんこうえん)
福岡
・木曽路博多駅南店
・旧立花家御花(おはな)松濤園(しょうとうえん)
熊本
・水前寺成趣園(すいぜんじじょうじゅえん)
鹿児島
・磯庭園(いそていえん)
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[目次]
・庭―四季の彩り
・まずアプローチから始まる
・水の造形を楽しむ
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広がる水景 池泉庭園
/舟遊式庭園ー水上に浮かぶ
/廻遊式庭園ー景の中を巡る
/座視鑑賞式庭園ー枠鳥が産む立体絵画
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走る水景色 流水庭園
/造形としての流水
/流れの発展と、その効果
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究極の水景 滝
/滝への篤い思い
/滝の種類と、その効果
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水景の演出 島と汀
/島ー奥行きと広がりを演出
/汀ー海を写す造形美
/橋ー水景の小道具

・石と砂の造形を楽しむ
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心で観る山岳と大海 枯山水庭園
/枯山水庭園の始まりー平安から鎌倉
/写景庭園ー景観を写す枯山水
/写意庭園ー寓話を造形する枯山水
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現代の枯山水庭園
/脈々とつくり続けられる枯山水
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白いキャンパス、白い造形
/白砂と砂紋と盛砂

・究極の庭園美、石組
/枯滝石組ー流れ落ちる水を表現
/枯流れー清流・大河を表現
/橋石組ー景の中に導く表現
/石島石組ー水面を鮮やかに演出
/護岸石組ー汀を立体的に演出
/須弥山・三尊・七五三・の石組
/蓬莱石組・鶴亀石組ー伝説の島
/舟石・夜泊石ー蓬莱島へ渡る

・廻遊より生まれた用と景の世界
/飛石ー用と景が織り成すリズムとメロディー
/敷石ー文様のハーモニー
/灯篭・層塔ー誘う灯、景の要

・庭の外にも庭が見える
/塀・生垣ー囲障で切り取る
/植栽で整える
/建築でとる・背景と共につくる
/調和と対比
/枠取りで見る

・庭の彩り―植栽の美
/植栽がつくる空間構成
/刈込がつくる造形的空間
/下草ー庭のたたずまいをつくる
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