2013年9月17日火曜日

「知的生活の方法」 渡部昇一 1976 ★


一体何のきっかけでこの本を知り、手にしたのかまったく覚えてないが、ふと自宅の本棚で背表紙を見つけ北京につれてきた一冊。娯楽小説ばかり読んでいるのではなく、少しは読書力のある生活に戻していかないということで、新書の一冊に名を連ねるようにと読み始める。

「今度は何の本を読んでるの?」と聞いて来る妻に、「渡部昇一の本」というと、「あ、授業受けた事がある」という。なんでも著者は、妻の出身の上智大学で有名な英文学の教授を長く勤めているという。

堕落した心には徹底して耳が痛くなる本を与えないといけないということで、齋藤先生よりも厳しい内容を期待してページをめくる。

日常生活を送るのではなく、知的生活を送る為には「己に対して忠実」である必要があり、ごまかす、ズルをする、あてずっぽうでやるという態度では進歩をその時点で止めてしまうので、簡単に言うと、分からないのに分かったふりをしないということだという。

面白い本は徹底的に読み込み、これを分かると言う事が聡明だと言われることだからとりあえず分かったふりをするのではなく、自分で「分かった」と思った瞬間まで分からない事を恐れないことが大切だと言う。

僧坊の縁先に置かれた碁盤。田舎の寺院で、仏事の余暇には本を読み、考え、客があれば碁を打っている山の中の坊さんの生活が、一つの理想的な生活のヴィジョンだと感じだ少年時代。

などと、所々共感できるところはあるが、もっとバリバリの教養主義者の訓示が書かれているのかと期待したが、如何にストイックに勉強してきたか、その事でどれだけ世界が広がったか、知的に生きるためにはどんな事が必要か、などということは書かれているが、何故だか耳は一向に痛くならない。
 
恐らく自分の知的生活レベルの低さの為にメッセージを受け取りきれていないのだろうと思いながらページを閉じて、さらりと妻の座る席の前に置いておく事にする。
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目次
1 自分をごまかさない精神
・知的正直
・「三国志」からシナ文学へ
・頼山陽をまねる
・縁先の碁盤
・「手段としての勉強」の危うさ
・恩師にめぐりあう
・「わからない」に耐える
・漱石体験
・「わかった」という実感
・巨人、大鵬、卵焼き
・英語の小説が読めない
・知的オルガスムスを求めて
・不全感の解消
・老齢は怖くない

2 古典をつくる
・繰りかえし読む
・趣味の形成
・漱石と漢文
・一つのセンスにコミットする
・精読が生み出すもの
・『半七捕物帳』
・古典とはなにか

3 本を買う意味
・身銭を切る
・読みたいときに取り出せる
・カード・システムの問題点
・無理としても本を買う
・ギッシングとハイネ
・貧乏学生時代
・極貧の中の楽しみ
・闇屋になってでも本を買う
・知的生活を守る危害

4 知的空間と情報整理
・彦一の知恵
・図書館に住む
・能動的知的生活者
・蔵書と知的生産の関係
・向坂氏の蔵書
・「ドイツ参謀本部」裏話
・「本がある」という自信
・金は時なり
・時間を金で買う方法
・クーラーの効用
・書斎の温熱対策
・図書館を持つ
・カード・システム
・カード・ボックス
・カードの入れ替え
・ファイルボックス
・コピー利用法
・卓上ファイル
・森鉄三先生の方法
・書斎の構想
・水鳥の足

5 知的生活の形而下学
・静かなる持続
・タイム・リミット
・ハマトンの見切り法
・見切り法の活用
・早起きカント
・ゲーテの場合
・夜型か朝型か
・血圧型
・「中断」
・溶鉱炉と知的生産
・ゲーテの城
・たっぷり時間をとる
・半端な時間の使い方
・通勤時間
・コウスティング
・睡眠と安らぎ

6 知的生活の形而下学
・交際を楽しむ
・食事について
・ビールとワイン
・コーヒーについて
・牛乳とウイスキー
・散歩について
・家族
・結婚
・夫婦の知的生活
・知的生活と家庭生活の両立
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