2011年1月5日水曜日

「白いリボン」 ミヒャエル・ハネケ 2009 ★★
















初夢・初詣・初日の出に気をまわすように、初映画となる正月一発目に見る映画の選択は結構気を使う。

どうせ後半にはぐずぐずになって、緊張と緩和の緩和だと自分を言い聞かせながら、なんら精神的集中を必要としないエンターテイメント映画に引っ張られてしまうのだから、せめて前半は飛ばして行こうと、ソフトなものよりもハードな映像を選ぶことになる。

しかもできることなら、映画館でしっかりと見たい。となると結構選択肢が狭められることになる。そんな訳で、これはと思いながら、敢えて年明けに残しておいた一本。

私の映画は観客にポップコーンを食べさせない、という監督の言葉に沿うと、娯楽気分で嫁を誘えるはずも無く、正月休みの空いた時間にそそくさと一人逃げるように銀座に足を運ぶ。

ミヒャエル、と聞くと、つい、エンデ、となってバスチアンの冒険が思い浮かんでウキウキしてしまうが、ハネケの方はとことん暗い。表現するならば、弱火であるけれど、ふつふつと沸く沸騰寸前の鍋の様な映像。

時は第一次大戦前夜のドイツの小さな村。仕掛けられた見えない針金によって、医者が落馬する事件がその後村で起こる様々な出来事のプロローグとして物語は始まる。

144分の上映時間を通して貫かれるのは、宗教という旧社会を支えてきた規律では抑えきれないねじれやゆがみ。それが臨界点へ達し爆発ギリギリという緊張感。

圧力の象徴としての白いリボンと、それに鬱憤を感じながらも、あくまでも良い子を演じ続ける子供達が、その数年後にナチの中心世代を構成していくというこれまたギリギリの時代背景。

家族を守る為に建前を並べて威厳を守り、共同体のガス抜きとして異物として登場する知恵遅れの子。思い出されるのは、「ドッグヴィル」の演劇的共同体だが、健全な共同体とは一体なんだろうか。

小さな村の混乱は解決されないままに、まるで大きな祝祭のように、そのまま戦争という大きな物語に渦を吸収されていく。

すっかりフラットになって、個人が世界に直接リンクされる時代に到達した今だからこそ、共同体の崩壊が誰にも止められずに、大きな破壊へとつながっていった時代を撮りたかったのだろうかと思いながら、そういうえばポップコーンを食べなかったことに気がつく。
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2009年カンヌ国際映画祭パルム・ドール
2009年ゴールデングローブ賞外国語映画賞
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