冬空のした自転車を走らせながら、耳を切る風音の誘発されて口ずさむ音楽。あれ、これは何の音楽だったっけ・・・と暫くペダルをこぎながら気づいたのは、この映画ののこぎり演奏。
何年か前に見たことは確実なのだけど、どうしてもストーリーが思い出せない派手な映画でなくて、こういう風に、いつまでも記憶の奥底に眠っていて、ふとした時に蘇ってくるのは、その独特な雰囲気に、脳細胞のある部分が、強烈に反応していたということだろう。やはりこういう映画はいい映画だと思いながら、ポヨーン、ポヨーンと続ける。
アメリの監督と言えば分かりやすいか、ジャン=ピエール・ジュネ。兎に角独特の雰囲気の影像作家。
時代設定のすらどうでもよくなるような、もやのかかったパリ郊外にポツンと建つ廃墟のような建物。優しさをもちよる軋むベットではなく、メトロノームのメタファーとして、一定の快楽のリズムを奏でる軋むベットは、ビルの住民の生活のテンポを刻む。
変てこな設定の中の変てこな住民がくりひろげる日常が破綻しないのは、それぞれの身につける小物から、動きから、毎日何を考えて過ごしているのか見えてくるような、ディテールへのこだわり。
今の世の中で一体どれだけの人間が、まだファンタジーというものを見る想像力を与えられているのかを考えると、驚くほど少数の人数に限られると思われる。そんな中、間違いなくテリー・ギリアムやティム・バートンなどと同様に、その頭の中で一体どんなファンタジーを見ているのか気になる才能の持ち主の一人。
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キャスト:ドミニク・ピノン、マリー=ロール・ドゥーニャ、ジャン=クロード・ドレフュス、カリン・ビアール、チッキー・オルガド
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