世の多くの夫婦に違わず、我々夫婦も末永く仲良くという願いをこめて、数年前のこの日に入籍を決めた「いい夫婦の日」。恐らく今朝も多くのカップルが書類を手にして、役所の窓口を訪れたことだろうと想像する。
妻の通う語学学校は短期留学の外国人生徒が多いためか、そんな彼らの関心を引くような課外活動が豊富である。前回は河底村へのツアーに参加したが、折角の結婚記念日だからということで、たまたま重なった「中国書道」のクラスへと妻が申し込みをしてくれていた。
妻のスペイン人のクラスメイトとその友人と一緒に参加するということで、近くのレストランで待ち合わせをし、一緒に夕飯を終えて会場である学校へ向かう。その女性は弁護士をしていたらしく、旦那さんはドイツ人で建築家だという。今回は仕事で来れなかったが次回は一緒に日本料理屋にでも行こうという話しに。友人の彼は気のいいスペイン人で、地元のバレンシアの産物を輸入するお店を経営しているという。
そんな話を聞きながらやっと到着した会場はすでにほぼ満員。文化の香りのする習い物に惹かれるのはどの国の女性も同じようで、定員20名のクラスの9割が女性。時間が無いというので、実際に書道の段保有者であるという課外活動の担当先生が流暢な英語で、中国書道の成り立ちや、基本的な道具の説明を行いながらも、時間が無いので早速8つあるという基本のストロークを勉強する。
配られる用紙を前にし、硯に墨をたらして、筆に吸い込ませると、遠き小学校の時の風景がバァッと蘇えってくるから不思議である。手首を曲げて、指の一本一本に意識を向けて筆を固定し、日本の様に流すのではなく、最後の最後まで繊細に筆を紙から剥がしていくようなストロークは先生が言うように、一種の瞑想のようなものである。
止めては動き戻しては跳ねて、白紙の中に細さと太さ、空虚と黒などの陰陽を描いていくという。水墨画とルーツを共にするという説明どおり、どちらかというと文字を描いているような感覚になる。そして最終的に描いたのは
「持之以恒」
一本の線を描いているときには、頭の中はその先にどう筆を動かすかだけ。
今朝も寝言で「まだレンダリングは準備できてない・・・」と唸っていたと妻から指摘されたように、あまりのストレスにさらされ、常に頭の中を回転させることを強いられている時間が数ヶ月続きっぱなしだったので、そんなところから数時間だけでも強引に解放させ、頭の中を空っぽにしようとしてくれた妻に感謝し、墨の匂いのする結婚記念日を終える。
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