2012年10月25日木曜日

「サハラ」 笹本稜平 ★



「私は誰なのか どうしてここにいるのか?」

自分の記憶がないまま、手にAK47持ちサハラ砂漠の真ん中で意識を取り戻したのは、元傭兵檜垣耀二。「フォックス・ストーン」、「マングースの尻尾」に続いて登場するハードボイルドな主人公。

傭兵という非正規のプロフェッショナルが活躍する為には、様々な謀略が絡み合う紛争が舞台となり、かつての作品ではアンゴラやジンバブエなどアフリカ大陸という日本人にとってはまだまだ謎に満ちた世界を舞台にしていたが、今度はその大陸をずっと北に移動して西サハラの独立問題と絡めて話は展開していく。

モロッコから独立をもくろむポリサリオ戦線と、西サハラの地下に埋まっているとされる大規模油田を巡っての各国の駆け引き。いつもどおり絡んでくる大国アメリカの国内政治の勢力図。それに踊らされ指をつっこむ日本の政治家と外務省。

毎度のように、マルセイユの盟友アラン・ピカールの助けを借りて、商社崩れの武器商人・戸崎真人に情報をもらい、PTSDに苦しむ妻・ミランダとのすったもんだを繰り返し、徐々に蘇る記憶と共に、断片的に謀略のベールが剥がされる。

モロッコの港都・カサブランカのある場所に監禁された妻がいるとされたのは、カサブランカの西に広がるリゾート地・アイン・ディアブ。昔立ち寄ったカサブランカのこの海岸で、大西洋に沈み行く夕日を眺めていたのを懐かしく思い出す。

当たり前の様に世界を飛び回り、世界中の一級のプロ達と仕事をし、ものすごい緊張感のなか自らの力で大仕事を成し遂げる。そんな姿がかっこよく映っていた前作に比べてどうしても既視感が否めないのがとても残念。

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