2012年10月18日木曜日

建築写真家

建築というものが敷地を持ち、大地に根ざすものである以上、そこから移動できないという宿命を背負うことになる。だからこそ、そこを訪れることができない人に、その建築を体験し、知ってもらう為にはどうしてもメディアに頼ることにある。20世紀の近代建築がグローバルに波及したのは、普及し始めた「写真」というメディアと幸福なる共存を成し得たためで、建築家にとってはその建築をメディアに載せる上で、意図する空間をより理想的に表現してくれる建築写真家の存在が欠かせなくなる。

MADのオルドス博物館やアブソリュート・タワーの写真を撮ってもらっている、建築写真家のイワン・バーンがザハ・ハディドのギャラクシー・ソーホーの撮影の為に北京に来るというので、一緒に夕食に行くことになる。

彼と会うのは、昨年のこの時期に東京の藤本壮介氏の事務所を訪れた時に、たまたま来ていた時以来。他のパートナーはもっと会っているのですっかり気が知れた中で、PR担当者を含め近くの鬼街で火鍋をつつく。

ベネズエラの高層スラムビルを彼が撮影し、それを建築家とキュレーターと一緒に展示した、現在開催中のベニス・ビエンナーレ建築展では、見事ゴールデン・ライオンを受賞したことをお祝いする。

彼のホームページをこまめにチェックしていたほうが、世界の建築業界がどう動いているのか?が良く分かるほど、現代の建築家に愛され、その作品をとにかくよく撮影している現代を代表する建築写真家である。

今回も、重慶でスティーブン・ホールの作品を撮影し、北京でザハ・ハディドを一日撮って、急遽入ったパリのSANAAの作品をとって、来週にはNYで別の撮影といい、家のあるアムステルダムはほとんど空けっぱなしという状態らしい。

建築写真家だけあって、やはり出版社や雑誌社とのコネクションは非常に硬いようで、危機に瀕したスペインの出版社のことや、我々のアブソリュート・タワーを掲載するイギリスの雑誌社の現在の動向など、とにかく詳しいだけでなく、BIGが天津の高層ビルのプロジェクトの為に設立する北京事務所の状況などなど、一体どうやって情報収集をしているのか?と思うほどに建築の世界情勢に精通している。

そんな話を聞きな自分もたまにはアンテナを伸ばして、世界がどう動いているのかキャッチしないと思いつつも、それでもまずやるべきは毎日の設計活動だなとブレを修正し、火鍋で汗だくになりながら、中国南部と北部で進行中の我々の作品の撮影も今年後半で行ってもらう為に彼のスケジュールに入れておいてもらって、またの再会を楽しみして明日の撮影の幸運を祈って別れる。

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