建築家にとって旅をすることはとても大切なことである。
設計する際に頭の中で作りたいと思う空間への想像力の源となるのは、かつて実際自分で見て、触れて、感じたものたちでしかない。
何を豊かな空間だと思うか、写真では良く見えていたけど実際に行ってみるとまったく違った感覚を受けたとか、とにかく自分の中での基準を作るためにはできるだけ多くの良質と呼ばれる建築を体験する必要がある。
そしてもう一つは、自分が生まれ育ったコンテクストから外に出て、自らの国の建築とそして自らのアイデンティティーを外から眺めること。それがその後の建築家として進む道に大きな力を与えてくれる。
だからこそ、建築を学ぶ若い時期にこそ、できるだけ多く外に出て、建築を見る機会を得ることができる人は幸福だと思う。
しかし得てして、若い学生にとっては、海外に渡って憧れていた建築を見るということは、相当大きな負担であることは間違いない。
そんなことを思いながら、2009年より始めた「MAD Travel Schoraship」。
中国全土で建築を学ぶ学生に呼びかけ、自分の行きたい都市や建築、その理由と現在各自が行っている勉強の状況やポートフォリト、それらの資料をもってこの奨学金に応募し、毎年5名の学生を選び、彼らが10日間ほど自ら選んだ場所に滞在できるだけの奨学金を交付するというもの。
もちろん、それほどの予算は自ら確保できないので、いろいろとスポンサーに協力をお願いするのだが、それも今年でもう4年目になり、毎年本当にいろんな場所のいろんな学生が毎年応募してきてくれ、そのポートフォリオの内容を見るのも非常に楽しいひと時である。
月末に締め切りを迎えるので、今年はどんな場所にMAD経由の若者が旅立ち、どんな思いをもって戻ってくるのかと思いを馳せながら、いつか同じ事を日本でできればと思う。
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