「フリーダム」と「リバティ」の違いを学んだ中学生時代に読んでいた漫画の舞台は南米で、インカやマヤといった南米大陸の奥に忘れ去られたかのような古代文明を通して繰り広げられた物語は、若い自分に南米を十分すぎるほど冒険の舞台としての印象を与えた。
大人になってもまだまだ異国としての響きを失わない、遠い国としての南米を舞台として、中学生を主人公としてマヤ文明を描く物語となれば、何故もっと早く読まなかったのかと悔やまれずにはいられない。
「科学の進歩は必ずしも人間を幸福にするわけではない」
自然との共存のイメージとして現代文明に対して対比の位置づけで使われ古されたマヤとはまったく違った切り口で描く下の世界。
「後悔ってのは一番くだらない。人生は無為に過ごすには長すぎ、何かをしようと思えば短すぎ」
地球の裏の南米と、職人が油にまみれる日本の工場を繋げる現代のグローバル世界の描き方。
「いいか、いつも自分の手を動かしておけ。いつも動かしておけば手はお前を裏切らない。楽しようとしたり、誰かに押し付けようと思ったりして動かさなくなったら、その瞬間にお前の手はお前を裏切るようになる。自分の手を動かさなくなった奴に限って偉そうなことを言う。キチンと自分の手を動かして、なおかつそれに見合うだけのことを言っているのは相当立派な人物だと思っていい。」
アマゾンの熱帯雨林にヘリコプターから落っこちて、もの凄いスピード感で展開される新世界。生命に恵みを与える森が、獰猛な姿を見せだす夜に感じる不安を主人公と共有しながらめくるページ。
「料理というのはじっくり作るのも大切だが、時には何よりスピードが優先される時があるんだ。今にも死にそうな人がいて、一刻も早く病院に運ばなければいけない時に救急車を作り始めるバカはいない。リヤカー 担いででも運んでいかないといけない。質は悪くなってもどうしても速さを優先し、期限に間に合わせることが一番大事な時がある。何かをする時、それがどういう仕事か考えるんだ。質が大事か、速さが大事か。今やらなければならないのか、長い時間をかけてやった方がいいのか。それを常に考えていないと時間は無駄にどんどん過ぎて行く。」
こういう話を読んでいると、学校の教室で学ぶことよりも一日の冒険が与えることが如何に多いかを痛感し、冒険を可能にする舞台がどれだけ残されているのかに想いを馳せる。
「面倒がらずに自分の知っていることを説明してくれる」
描かれるとても魅力的な男たち。
「心配も喜びのうち。怒ったり、嫌になったり、そういう相手がいるっていうのも喜びの中に含まれる」
同じくらい魅力的に描かれる女たち。
「不安というのは膨れるのが速い。恐れや恐怖を吸い込み、目の前のものを何も見えなくする。」
そして何よりも中学生という最も多感で、不安定で、そして向う見ずなことが可能であった「あの時」の気持ちを見事に描き、引き込む作者。息子を持つことになったら、ぜひ中学生になるくらいに読ませたいと思える一冊。
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