ホテルをシテ島付近にした理由の一つが、今回こそどうしてもこのサント・シャペル(Sainte-Chapelle)を訪れてみたかったのと、夜に行われているこの教会内部でのコンサートを体験してみたかったからである。
霙が混じる冷たい雨の中、シテ島に渡り入り口に向かっていくとすでにかなりの観光客が並んでいる。9時の開門に合わせてきているのかと思えば、どうやら隣のパレ・ド・ジュスティス(Palais de Justice, House of Justic)、つまり司法関係の建物が入る歴史建物への見学に訪れた人々のようであり、こちらのサント·シャペルには逆に誰も並んでおらず、さっさと中に入ることが出来る。
入り口の安全検査のみ別になっており、中に入ると敷地は一つになっているので、「ひょっとして先ほど逆側に並んでいたのは観光客ではなくて、それこそ裁判に訪れていた人なのかも・・・」などと思いを巡らしながら、教会入り口へ。まだチケット販売の窓口が開いていないために、同じようにこのご時勢に大きなカメラを手にいろいろな角度から写真を撮っている外国人男性と、ポジションを争うようにして外観を取っているとやっと窓口のおばさんがやってきたので、チケットを購入して中に。
観光のオフシーズンの寒い早朝ということで、内部は先ほどの男性と二人占め。ルイ9世が収集した聖遺物を納めるために建設を銘じたのが1239年というから、ゆうに800年の歳月が過ぎており、後期ゴシックの最高傑作といわれている二階部分の教会堂へと狭い階段をあがっていく。
曇空の早朝ということで、降り注ぐ日の光の下の荘厳な空間という訳ではないが、細く伸びた柱がエレガントに曲線を描きながら空に消えるようにして天井を支え、その間を色とりどりのステンドグラスが表現のスケールを変えて、更に細かい表情と色で覆われた空間に圧倒される。
西洋の建築空間を見に行く前には簡単に見直し予習をする3冊のうち一冊である「西洋建築空間史 西洋の壁面構成」 によれば、初期ゴシック教会堂の6分ヴォールトから盛期ゴシック教会堂の4分ヴォールトへの変換点に位置する建物であり、組積造の壁から柱への経過を継承し、現代建築におけるピロティへの発展へとつなげていく構造表現の変化、つまり壁から分化し、垂直加重を受ける縦方向の表現要素として独立していく柱というエレメントが、空間表現として昇華した見事な実例であるという。柱以外全て開口部。だからこそ感じられる「軽さ」は、現代まで繋がる建築の大きなテーゼの一つともなっている訳である。
時間に余裕があるために、30分ほどじっくりと内部を隅々まで観察し、各ステンドグラスの意味の解説などに目を通し、次なる目的地に足を向けるために敷地の外に出ると、すぐ近くに見える初期ゴシック教会堂として、当時のままの姿をよく残しているといわれるノートルダム大聖堂の双塔を視界に捉えながらセーヌ川沿いを西へと向かうことにする。ちなみにこのサント・シャペル。所属はギリギリ1区である。
パリ1区
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