2015年12月5日土曜日

「NHKスペシャル|調査報告 介護危機 急増“無届け介護ハウス” 」 NHK 2015 ★★


2016年の日本。どんな都市に住んでいようとも、現役世代は親世代やその上の祖父母世代の介護問題を、現実問題として常に日常の中にあるか、すぐ横に迫っている。誰もが家族や親戚の中で、介護が必要になった高齢者をどうの施設に入れるか、また費用や待機の問題で入れることが出来るか、そしてそのやり取りにおける家族への負担を実際に体験しているはずである。

それと同時に、この10年近くで地方を巡ると大きく風景が変わったことに気がつくことになる。「こんなところに大きな施設ができたけど、なんだろう・・・」と思うような施設は大概、この様な高齢者ケア施設であることが多い。非常に控えめで、決して目立つことなく風景に溶け込もうとしているが、それでもやはり何かしらの違和感を風景に与える結果になっているのは否めない。

そんな高齢化社会が実際問題として社会の風景を変え始めた現代。政府が取った方針は、できるだけ「在宅介護」を推し進め、社会保障費を抑制しようとする政策。病院側には、患者の多くを在宅に帰さなければ診療報酬を加算しないようにして、無期限に受け入れるのではなく、できるだけ「帰宅」という結果を出させようとし、また逆に高齢者側にも比較的低予算で入所することが出来る「特別養護老人ホーム」への入所条件を厳しくすることで、現在でも多くの人が待機老人として入所街しているにもかかわらず、更に入所できない人を増やすことになっていく。

そうなると、自らの経済的負担を増やして、民間のケアハウスなどに入所しろということになるが、それには驚くほどの費用がかかるのは、恐らくどこの家庭でも既に経験済みにことであろう。何百万、何千万という費用を払ってケアをしてもらうか、それとも仕事を辞めたりやり方を帰ることで、家庭の中から誰かが介護をするか、いわゆる介護格差がより一層鮮明になることになる。

そんな状況の中ある意味必然として登場するのがこの無届け介護ハウス。その内容はいくつか異なるケースがあるが、この状況に苦しむ人々に対しての受け皿をなるべく、低予算でも十分なケアが受けられる施設を高齢者やその家族の視点から考えて社会に提供しようとし、空き家となった民家に手を入れて、共同で生活を営みながらケアを提供するというケースにおいては、政府が定める施設の設備まで完璧に満足するには相当な費用がかかってしまい無理ではあるが、実際問題として生活を営み、困っている家族の負担を軽減するための使用できる施設としてはなんとか十分であるという状態であり、その為に行政側からとしては基準を守るために改修をするなどの要求を突きつけられ、それが出来ないなら施設の運営を取り消す処分を行うなどの厳しいやり取りが行われている。

そうで無いケースは、「安かろう、悪かろう」ではないが、この状況を一つのビジネスチャンスと見込み、誰も使わなくなった建物のストックを利用して、高齢者の生活に相応しい建物として改修することなしに、とにかく家庭では面倒を見れなくなった高齢者を家から出し、その受け皿として低予算で入ることが出来る場所を提供するという施設も登場してくる。もちろん、集団が共同で生活する、更に身体の不自由な高齢者であるということを考えれば、火災など何か発生したときに大きな問題になるのは目に見えている。

だからこそ行政側もできるだけこれらの施設を取り締まろうとするが、それでも社会のいたるところに、こういうレベルの施設でも高齢者を受け入れてくれ、自分達の負担が軽減するのは非常に助かるという家庭があるというのも現実であり、彼らに上記の非常に高額な民間の受け入れ施設を許容できる経済的余裕があるかと言えば、決してそうではなく、その社会の歪が徐々に大きくなっていっている。それが現在の日本。

恐らく、今後都市部よりも地方都市の方が、この社会問題によってどんどん風景が変わり、その速度はより加速するものと想像される。それぞれの場所で生まれた人々が誰でも入れることの出来た小学校や中学校。それと同じ様に、人生の最後に誰でも低予算にて入ることの出来、そして決して贅沢ではないが必要十分なケアが受けられる終末を迎える施設はどうにかして行政側で作り運営していく、それが本当に必要な時期になってきているのだろうと想像する。

その為には、本当に税金が不必要なところに回されたり、途中で搾取されたりと消えたりすること泣く、明確にどんな使い道がされたのか、それがどんな効果をもたらしているのか、そんな風に国の運営の仕方が変わっていくことを願うばかりだと思いながらテレビを消すことにする。



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