まずこの作家、「乾くるみ」という名前で、恋愛小説と来たら、どうしても「女性作家」だと連想してしまう。が、実は「男性」。そんなところからも、作家のややひねくれた性格が見えてきそうな気がする。
そして、作家は国立大学の数学科卒業という経歴の持ち主。そこからもロジカルに構築された繊細な世界観がしっかりと作品の中に落とし込まれていてとても安心して読み進められる作品を世に送り出してくれている。
そんな訳で、最後の最後に大どんでん返しが待ち受けるこの恋愛ミステリー。映画で言ったら「ユージュアル・サスペクツ」レベルの衝撃といっても過言でないだろうが、数学科卒業というとこからか、明快な種明かしが行われないまま物語が終わってしまうのもまたなかなかの趣向というところ。
ミステリー好きの数学家として暖めてきた構想だったに違いないと思われるが、これから数学に精通したミステリー作家として、より緻密に、より歪んだ作品を期待したい
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