「暑さ寒さも彼岸まで」とはよくいったもので、春分を境に朗らかな日が続いている。その中日に季節っぽいことでもしようかなと、思いをめぐらせていると、街中からピーヒャラピーヒャラ祭囃子が耳に入ってくる。なんでも、麻布十番商会で十番寄席なるものが開催されると言う。
チラシを手にとってみると、尺八漫談、演芸、漫才と演目の横に1000円でワイン一杯ついてきますと謳い文句に即決で、そんな渋い休日の過ごし方を共有してくれそうな人に電話。寄席イコール落語と少々の勘違いはあったようだが、二人で会場へと足を運ぶ。
商店街からわき道に入った雑居ビルの二階に会場はあり、20帖程の畳の会場に座布団が敷いてあり、その前に簡単な舞台が用意されている。入り口脇で紙カップに美味くもないワインをつがれて、寄席体験開始。
「フラガール」の地方興行のような味のある会場だけに、演目も非常に渋いものが続く。口にピアニカ、手にギター、足にカスタネットで民謡を奏でる音楽漫談。学生かなと思うような若い芸人の漫才。フラガールでも出てこないかなと少々期待していたのだが、最後にでてきたのは、「戦時中南方に出兵してましてね」という86歳のおじいさんの演芸。これがよかった。なんでも江戸ゴマというものをするのだが、綺麗に漆塗りされ、鉛を入れられたコマは軽く手で触れただけで、ずっと回り続ける。
今日はめでたいので、とどこかの師匠のようなフリで、では末八をやりますと、コマを扇子の上に載せ、それを広げていく。会場から思わず「おおっ」と感嘆の声。続いて風見どりといって、棒の先に乗せたコマがぐらりと角度をつけ、まるで接着剤でもついてるかのようにグルグルグルグル。会場からは思わず拍手。そして最後に綱渡り。昔正月番組で見たような舞台の袖から細い糸の上をコマがケーブルカーのようにつらつらと渡っていき、最後はポンと机に着地。いやー、歳の功と、思わず感心。どこで購入できるのか気になってしょうがない。
途中からでしたので、と半額返してもらってさらにお得気分に浸り、殺生禁断により肉は食べまいと、ならばおでんと十番の黒澤に足を運ぶ。あっさりの京風おでんに舌鼓をうち、気持ちを春モードに切り替える。
0 件のコメント:
コメントを投稿