今回日本に帰ってきたのは、主宰するMADの東京オフィスの設立のためである。
世間の予算削減の波に乗ろうと、ここは自作でフローリングを張り替えようと一大決心。どこにでもあるようなフローリング・カーペットを一人ぺらぺらと剥がし、軽トラを借りて友人が働く材木店にずかずかと乗り込んで、廃材処分決定済みの材から良さそうな赤松をゲット。
その友人と彼の先輩の熟練大工さんの手を借りて、4Mの材から搬入しやすく1Mまで切り出していく。途中、そりの酷い材ははじいていくのだが、4Mの材が160本あるわけだから、単純計算640回切らなきゃいけないわけになる。総量1トン近くなるわけだが、いらないという床専用の塗料と一緒に軽トラにトコトコ積み込んで、オフィスに搬入。この作業だけで、普段の一週間分の筋トレに値するのではと思うくらいの肉体労働。
搬入さえ終わってしまえば、あとは自分ががんばるだけと高をくくっていたのだが、その横で「ここからが大変なんだよな」とポツリ友人。
廃材だけあって、加工も何も施してない無垢材なわけで、後ほどばんばん沿って歩けなくなるのを防ぐため4面の面取り作業開始。これが大晦日せまる26日。単純に640本の材の4面をとるわけだから、2560回のカンナがけとなるわけで、さすがにこれだけやってると次第に要領も良くなり、段取りもよくなってくるのだが、いかんせん時間と体力は異常に消耗していく。そんなこんなであっさり年明け。あけましておめでとう、赤松。
面取りを終えた材を、とっとこ床に仮置きして半端材を切り出していく。デジタルな時代にてびきノコ。週十回嫌になり布団にもぐりこんでは、「いやいや、俺以外誰がやる?」と思い直して、ギーコギコ。
一面とりあえず仮置きができるとそれなりに見えてくるから少々の満足感にそそられて、そのまま貼りつけ作業へと移行する。最近よく足を運ぶ六本木ドンキホーテで両面テープを買占め、一部分ずつ平行移動しては両面テープを張って、接着剤を塗りつけ、一枚一枚丁寧に貼り付けていく。
この作業、一番苦しかったのが両面テープを剥がすところ。「きーーーーーーー」っとなって、素手で作業していたら、終わったころには接着剤で手が真っ黒に。しかも特殊剤なので、シンナーで洗っても取れない。35平米ほどの貼り付け面積なのだが、地味な移動距離となるとかるく数キロになっているのではないだろうか。日本帰国以後ほぼ毎日行き続けたジムで背筋メニューを入れといて良かったと、本気で思う。
なんとか張り終え、暴れだした部分を欲しかったボッシュの電気ドリルでビス打ち。近隣に迷惑のかからない程度のソフトなビス打ち。
ここまでくれば峠は越えたかと思ったのだが、いやまだまだ。またまたドンキにいって、ツナギを買い込み、行きつけの金物屋でペンキを大量に買い込む。そして床も壁も天井もすべてペンキ塗り。体力も限界に近づいてきているので、なんらかの理由をつけて建築関係の友人を呼び込む。しかし彼らもうっすらその意図に気付くもんだから、なんだかんだで夕方くらいに登場。完全に戦力外通告。
そんなこんなで、アクティブな引きこもりと化したこの年末年始。その成果に少なくない満足感を得ながら寝るこのごろ。やはり大工はすごいと再確認。
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