2016年1月1日金曜日

ジョッキー・クラブ・イノベーション・タワー(Jockey Club Innovation Tower) ザハ・ハディド(Zaha Hadid) 2014 ★



夜の便で香港を離れるまでに時間があるので、空港に直結したセントラル駅で市内チェックインを済ませ、身軽になってむかったのは香港理工大学(The Hong Kong Polytechnic University)のキャンパス。

九龍側の目抜き通りである彌敦道(ネイザンロード)から東に向かったところに広い敷地を持ち広がる香港有数の大学である。古い建物が立ち並ぶキャンパスは新年を間近にして学生の数もまばらであるが、大学独特の若者があちこちでグループでまとまり何か活動をしている姿がかもし出す賑やかしい雰囲気に包まれている。

未来に希望を持つ若者が集まる場所というのはどこの国でもいいものだと思いながら先を進むと、落ち着いたキャンパスの雰囲気とはかけ離れた未来的な建物がいきなり視界に飛び込んでくる。が、引きがない空間とその高さのために頂部までは視界に捕らえられず、かなりの圧迫感を持って迫ってくる感じである。

この建物はジョッキー・クラブ・イノベーション・タワー(Jockey Club Innovation Tower) と呼ばれ、2007年に行われたコンペによってザハ事務所が一等を獲得した大学のデザイン学部の新しい施設である。限られた敷地に対して、様々に変化する社会情勢を踏まえて、大学としても要求される機能が増加し、その結果1万5千平米という延べ床面積を76mという高さの建物として収めることになったようである。

76mということで、70mとなっていた東京でのザハ事務所による新国立競技場の規模がいかに大きなものだったのかとこちらのタワーを見て理解する。また敷地も大学キャンパスの端に位置し、既存建物との間の空間も余裕を持って取ることができなかったのか、水平に配置されている古い建物郡からこの新しい縦に伸びる棟の間になんら横から縦へとつなぐ空間は設置されておらず、かなり唐突に、そして視線をブロックするようにいきなり建物へと出会うことになる。

内部に入り学生の作品の展示などを見ながらサッシ周りなどを見ていくが、先ほどのパシフィックプレイスに比べて、施工精度はかなり落ちるようである。これが斜めになった壁やガラスなどからくる難易度の高さからなのか、それとも設計を実物に落とし込むための図面のクオリティなのか、それともそれを単に施工会社やLDIの質の問題なのか、などと思い悩みながら再度外にでて見上げた外装材は、完成から2年もたっていないが、やはり相当に汚れが目立つ部分も多く、複雑形状をもった建物のモノとしての難しさと着地点をどこに目指すかの問題を改めて理解して大学を後にすることにする。


















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