2021年6月11日金曜日

世界遺産登録に向けた北京の緑化


車道には何本もの車線を占める白線が引かれている。いったい、どれが正しいのか混乱しながらも、道路の中心で行われる何百本もの植樹作業に勤しむ作業員との距離を保ちながらハンドルを握る。

 
こんな状態がすでに数か月過ぎており、すでに何本かの幹線道路では、中心に立派な街路樹が立ち並び、そのお陰で狭くなった車道と変わることのない車の数で、渋滞は以前より酷くなった気がするが、それと同時に、北京以外の地域で所得したナンバープレートを付ける車が市内に入ることへの規制が厳しくなり、街のあちこちでは、他地域のナンバープレートを付けた車を取り締まる警察が多くみられ、こちらも車線を狭めて取り締まりをするために、ボトルネックとなりさらに渋滞を酷くしている。
 
北京にとって中心軸の意味はとても大きく、 中国の歴史の中でも最も偉大な建造物は北京であると言われるほどに、その構造と中心軸によって北京は他の都市とは全く異なった場所性を持った都市となってきた。故宮(紫禁城)や天壇はすでに個別に世界遺産に登録されているが、都市構造を決定づける中心軸、その上に位置する14か所の遺産(安定门,天坛,先农坛,天安门广场,天安门,太庙など)を合わせて、北京中心軸(北京中轴线)として世界遺産に登録しようというのはこの国にとって悲願であった。その運動が2011年に動き出し、2030年の申請、2035年の登録実現を目指し、中心軸の遺産の修復を含め、北京市内の様々な場所での整備が進められている。


市内の緑化もその整備の一環であるという。緑が増えることは都市の未来にとってはもちろん良いことだろうし、歴史の中で作られた特徴ある都市の構造がしっかりと保存されていることは素晴らしいことであるが、時代の中での世界観を表す場所として作り上げられた都市の構造が、今度は世界遺産という口実によって、なかなか目に見えないレベルではあるが、確実に市民生活に影響を与えるほどに都市の構成を変えられている姿を目撃することは、やはり歴史は作られるものだと思うと同時に、これらの様々な変化も雄大な時間の中で吸収していく都市の存在の大きさを感じさせる。

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