今回、思い切ってスリランカまで足を伸ばそうと思った理由は二つあった。一つはジェフリー・バワ(Geoffrey
Bawa)の建築を実際に観て体験すること。そしてもう一つは2018年のRIBAアワードを受賞したスリランカの建築家パリンダ・カンナンガラ(Palinda
Kannangara) さんのオフィスを訪れること。
How I Live Sri Lankan architect Palinda Kannangara
RIBA Award for International Excellence 2018
スリランカの現代建築を調べているうちに、とても質の高い住宅の作品が多くあるのを知ったが、その中でも特に内部と外部がうまい具合に接合し、とても心地よさそうな空間で微笑んでいるパリンダさんの写真が気になり、思い切ってオフィスにコンタクトを取ってみると、快く訪問を受け入れてくれた。
スリランカは正月が4月になり、年末年始といえども通常通りとはいえども、まさか1月1日を指定されるとはなんとも驚いたが、その日のアポイントから逆算し旅程を立てて、スリランカを反時計回りに巡り、大晦日にコロンボに戻ってきた。そして元旦の午前中にバワのNumber 11を訪問し、午後にパリンダさんのオフィスを訪れるという、なんとも建築色の強い一年の始まりとなった。
コロンボから東に向かい、小さい頃その特色のある響きのために何度も友達と言い合ったスリジャヤワルダナプラコッテに入る手前に位置するラジャギリヤ (Rajagiriya)。分かりづらいだろうからと、オフィスの若いスタッフの子とやり取りをして、近くの交差点で合流する。
バラックのような商店が道沿いにならび、緑の生い茂った中にポツポツと住宅が立ち並ぶ風景のなか、少し脇道に入ってしばらく進むと、それらしき建物が右手に見えてくる。非常にシンプルなコンクリートのフレームに日焼レンガを嵌め込んだファサードの下には、ピロティを利用した駐車場が敷地の反対側に広がる湿地帯からの風を運んでくれる。
How I Live Sri Lankan architect Palinda Kannangara
RIBA Award for International Excellence 2018
スリランカの現代建築を調べているうちに、とても質の高い住宅の作品が多くあるのを知ったが、その中でも特に内部と外部がうまい具合に接合し、とても心地よさそうな空間で微笑んでいるパリンダさんの写真が気になり、思い切ってオフィスにコンタクトを取ってみると、快く訪問を受け入れてくれた。
スリランカは正月が4月になり、年末年始といえども通常通りとはいえども、まさか1月1日を指定されるとはなんとも驚いたが、その日のアポイントから逆算し旅程を立てて、スリランカを反時計回りに巡り、大晦日にコロンボに戻ってきた。そして元旦の午前中にバワのNumber 11を訪問し、午後にパリンダさんのオフィスを訪れるという、なんとも建築色の強い一年の始まりとなった。
コロンボから東に向かい、小さい頃その特色のある響きのために何度も友達と言い合ったスリジャヤワルダナプラコッテに入る手前に位置するラジャギリヤ (Rajagiriya)。分かりづらいだろうからと、オフィスの若いスタッフの子とやり取りをして、近くの交差点で合流する。
バラックのような商店が道沿いにならび、緑の生い茂った中にポツポツと住宅が立ち並ぶ風景のなか、少し脇道に入ってしばらく進むと、それらしき建物が右手に見えてくる。非常にシンプルなコンクリートのフレームに日焼レンガを嵌め込んだファサードの下には、ピロティを利用した駐車場が敷地の反対側に広がる湿地帯からの風を運んでくれる。
駐車場脇の扉を抜けると右手にこちらも風の抜ける大きな階段が広がり、上りきると切り取られた湿地の風景が待ち受けてくれる。脇に置かれたベンチに座り、靴を脱いでガラスの扉を抜けると、巨大なアコーディオンタイプのガラスサッシを左手にもった、とても気持ちの良い吹き抜け空間。そこで、髭に覆われた大きな笑顔で迎えてくれるパリンダさん。簡単な挨拶を終えると、すぐにオフィスを案内してくれる。二階はオフィスとして使用していて、数名のスタッフが進行中のプロジェクトの設計を行っているという。3階から上は自宅で、仕事の間は上にいて、時折下に降りてきては打ち合わせや指示をしているという。
3階の寝室も両開きの大きな窓が湿地に向けられ気持ちのよい風が抜けていく。南のレンガのスクリーンの後ろも吹き抜けになっており、ここから風が上に抜けるようになっているようだ。
4階は南北に狭い空間が、3枚引きのガラス戸で翠いっぱいのテラスにつながっており、自然の中のパヴィリオンといった雰囲気。風も虫も流れて、自然に溶け出すようなとても心地よい空間。真ん中に置かれた大きなアイランドキッチンで甘いお菓子とお茶を用意してくれ、あるアーティストの家のために作ったというソファーテーブルの周りに座りながら様々な話を聞かせてくれる。音楽好きだというので、あちこちに組み込まれたスピーカーから流れる音楽もまた、外の自然の中に消えていくような気がする。
裸足のままテラスに降りて、湿地に広がる自然を眺めながら、この国の状況やバワを経て現在のスリランカの建築事情など話をしている中でとても印象的だったのが、「自分は自分の手の届く範囲で仕事がしたい。だからスリランカと南インドでプロジェクトをするだけにしている。その方が自分が幸せに仕事をできるから」というパリンダさんの言葉。
この住宅兼スタジオも、土地を購入してから、資金がなかったのでなかなか建設ができなかったが、お金が入っては進めてと時間をかけながら建てたんだと教えてくれ、裸足であちこちを動き回る姿そのもので、とても地に足の着いた建築家との印象を受ける。
気が付けば数時間が経過しており、元旦の日の快く受け入れて得くれたことに感謝を伝え、妻と二人、とても強い幸福感に包まれながらコロンボへの帰路に就く。建築とはどうあるべきか。自分が信じていることが設計にどう反映されるのか。人生の多くを過ごす場所がどうあるべきか。いろんなことを考える貴重なきっかけになる、そんな重要な訪問であったと、今後の人生で何度も思いなおすことになるだろうと思いながら。
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