世界の大都市と呼ばれる、NY、ロンドン、東京、北京、上海などがその存在価値を新たなる世界市場の中で高めるために、官民一体となって様々な都市内部における再開発を加速させている。そしてフランスの首都・パリもまた都市の在り方を新たなる時代に適応すべき様々な動きを見せている。
特に環境に配慮した都市へと変貌すべく、パリ市の策定した計画によれば2020年を目標に、再生エネルギーの利用率の大幅な上昇、そしてCO2などの温室効果ガスの削減などを掲げ、既存の建物の改修や新たなる建物の建設にはかなり高いハードルが課せられることとなった。
そのモデルケースとして、パリ市が中心となって環境に配慮した計画に基づいた大規模な再開発がパリの北部、17区に含まれるバティニョール(Batignolles)と呼ばれるエリアにて2010年より開始された。
この地は、パリの外側に隣接するクリシー市との境目に位置し、フランス北部へと伸びる鉄道の拠点駅が位置し、非常に多くの線路が入り込み、その隣接地は鉄道用地として確保されていたが、パリ市が2012年のオリンピック招致に手を上げた際に、この地を選手村予定地として買い上げたが、結局周知の通り2012年は長年のライバルでお隣のロンドンに破れたため、その土地を一部民間に払い下げるとともに、パリ市が主導する形でこの地を使って未来に向けての新たなる開発がスタートしたという訳である。
スケールメリットを利用した環境への配慮だけではなく、このように新たに都市の中で大規模開発が行われると、投資目的や収入の高い層だけが住まう、偏った街区ができないように、プロジェクトのもう一つの肝は社会的多様性を確保するために、相当数のソーシャル・ハウジングを併設するということ。これはぜひとも日本でも同様な動きが出てきてほしいが、やはり民間のディベロッパー単体の開発ではどうしても資金回収が主な目的となり、このように政府の介入が無いとなかなか実現しないのだろうと思わずにいられない。
まだまだ日本語で詳しい情報が手に入るサイトは無いようであるが、パリの様な大都市において、これだけ大規模な計画がスタートするのは建築業界においては非常に注目されるプロジェクトとなり、フランスらしくその中のいくつかの住宅プロジェクトも国際コンペによって設計事務所が選定されることとなり、一つの高層アパートメントの設計を我々MAD Architectsが手がけることとなり、3年もの長い年月をかけて進めていたが、この度やっと公式な形でニュースを流せることとなった。
西側に線路網が走り、住宅郡を挟んで東側にはマルティン・ルーサー・キング公園と呼ばれる広大な都市公園があり、近くにはパリ中心へと繋がるメトロの駅が二つと、住環境としては非常に恵まれている。現在シテ島の中心施設として機能しているパレ・ド・ジュスティス(Palais de Justice, House of Justic)、つまり司法関係の建物がが2017年にはこのバティニョールへと引越しをすることもあり、行政施設も併せて中心から離れて都市の中に新たなる人の流れを作り出そうとする野心的な計画である。
完成まではまだまだ長いが、ぜひとも21世紀のパリの顔となるプロジェクトを通して、長いパリの歴史を深く理解する機会を大切にして、パリを実体として身体にとりこめるようにと思いを馳せる。
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