アニメにしかできないこと。アニメにしか描けない世界観。それよって様々なクリエイターやデザイナーに刺激を与える。その価値観を意識的かそれとも無意識的にかは別にしてしっかりと見据えていたからこそ、現在の日本のアニメ文化、ジャパニメーションがこれだけ世界中で文化として認知されているのだろう。
バイオハザードのようにCGが如何に実写に近づくかではなく、アニメというヴァーチャルな世界の中だからこそできり映画の撮り方。そのコマ割り。世界観の構築。未来の在り方。
そういう視点から見ていくと、歴史上評価されてきた、もしくは偉大な映画監督に影響を与えた作品というのはやはり限られてくるであろう。
映像作品として歴史に名を残すにはその世界観、ストーリー性、撮影方法などすべてにおいて高いレベルを要求されるが、その全ての点で高得点を獲得し「名作」として名があがってくるのはいつでも「アキラ」、「攻殻機動隊」、「宮崎駿の一連の作品」とお決まりになっていたところに、21世紀になってサマーウォーズなどの作品が新しい風として名乗りを上げてきているというのが現状である。
建築の世界で生きていると、このように未来を描く想像力豊かな映像作品はいつでも様々なところで引用され、「知っておくべきこと」として頭の中にインプットされている。そして知らず知らずの上でその動向にアンテナを張っていることが常となるのだが、ついついのサボり癖で、0年代初頭までしかキャッチアップしてなかった。
しかし10年代に突入し、その世界でもほぼプレイヤーが固まってきた感のある最近。重い腰を挙げてこの十年のアニメ事情を勉強するかと調べ出すと、上記の名作を超える評価を得たと、いろんなところで取り上げられているのがこのパプリカ。
原作含め全くの勉強不足・・・。映画の制作プロダクションをしているフランス人の友人と食事をしている時にこのパプリカの話になるとやはり知っている様子。このフランス人の友人は日本オタクでとにかく物知りな上におしゃべり好きなので、何か話をふってあげるとずっと喋っているので、その間に出てきた食事を食べ進めるという作戦が有効である。
それはさておき、パプリカ。人の夢に入り込むというインセプション的な内容にも関わらず、その世界観は科学の進化した未来という感じからは程遠く、あくまでもアキハバラ的なオタク世界の延長線上に位置し、その映像もまた見事。各コマの中で、ここまでディテールで破綻することなく映像を作り上げるには相当な想像力を要するだろうとゾッとする。オリエンタルな雰囲気も併せ持ってアメリカでの上々な興行収益というのも納得。
ストーリーは原作の筒井康隆に依るのだろうが、それに目をつけ、キャラクターに真の命を吹き込み、行の間に見える360度の世界を構築していくそのクリエイティビティティー。監督の今氏が脳裏に見たであろう毒々しい世界がとても新鮮。とにかく音楽含めて素晴らしい。デジタルの刺激に慣れすぎて何も新しくない世界において、それでも圧倒的な刺激を与えてくれて、アニメのあるべき姿を見せてくれる必見の一作。
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スタッフ
監督 今敏
プロデューサー 丸田順悟
制作 プロデューサー 豊田智紀
企画 丸山正雄
原作 筒井康隆
脚本 水上清資・今敏
キャスト
林原めぐみ パプリカ/千葉敦子
江守徹 乾精次郎
堀勝之祐 島寅太朗
古谷徹 時田浩作
大塚明夫 粉川利美
山寺宏一 小山内守雄
田中秀幸 あいつ
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