2012年7月11日水曜日

誕生日


ここ一ヶ月毎日降りかかってくる仕事の波を、
必死に息継ぎしながら泳ぎ切るので精一杯で、
落ち着いて過ぎた一日を振り返るなんて余裕は、
とてもじゃないが望めるは訳も無く、
ただただ指の間から零れる水のように、
過ごした時間が自分の中に定着することなく,
流れていってしまっているようでとてもやるせない。

どんなに頑張ってもノンストレスにできる訳も無いと理解しつつ、
せめてこの日くらいはレスストレスで過ごそうと心に決めて、

「Today is my birthday, i don't need any stress but a good news.」

とプロジェクト・アーキテクト達に釘を刺し  、
なんとか変化を日常に取り込もうとする海馬たちに対抗すべく、
歴史上の建築家達がこの年齢時に、
どんな風景を見ていたかを調べることにする。

ライトはユニティ教会の構想に夢中になっている最中で、
アアルトはヘルシンキに移り自邸を設計するちょっと前で、
カーンは自らの設計事務所を立ち上げたばかりで、
ミースはフリードリヒ街のオフィスビル案やガラスのスカイスクレーパー案など、
野心的なプロジェクト通して自らの生涯の方向性を見つけつつあり、
ル・コルビュジエは翌年発表される『建築をめざして』にむけて、
長年のアイデアをまとめているところであったか。

日本を見てみると
伊東豊雄は「White U」で住宅の根源に挑戦していて、
安藤忠雄は「住吉の長屋」で日本建築の根源に向かっていた。

こうして見ると建築家にとっての30代半ばは、
やっと建築の手触りが分かってきたところで、
同時に見えてきた目の前に伸びる道のりの長さを感じつつ、
毎日考えている頭の中身や言葉達と、
もやもやした風景を定着させる手によるスケッチとの間に、
どうしようもない距離を感じてはうな垂れて、
そして次の朝にはまた手を動かしてという、
オートポイエーシスのサイクルに没頭している頃合ということを、
歴史の必然と自らを納得させて誕生日を消化する。

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