二年前のこの時期、イスタンブールに居た。大学院時代の友人のトルコ人がこれまた同級生のポルトガル人と結婚するというので、のこのこ出かけていった。そこで飲むのはやはりチャイなのだが、チャからティーへと文化の変遷地なんだと思うとなんだか一層美味しく感じた。
茶の文化を運んだシルクロード。今、その東の果てでいるべきでない「チャイ」が街に溢れている。
「チャイ(拆)」。
先日、大山子(798)で北京の現代アートシーンの仕掛け人の黄鋭(ホアン・ルイ)さんのアトリエに伺った。ずかずかと寝室から屋上まで上がらせてもらったのだが、その時に現在作成中だという、「CHI-NA・拆那(チャイナ)」という作品を眼にすることができた。
「拆」というのは、政府が取り壊すことを決めた建物に、「近々取り壊します」という意味ででかでかと赤丸つきで壁にしるしをつけるもの。
日本の様に何年もかけて交渉なんてものはさらさら頭にないので、「チャイ」が現れた数ヶ月以内には建物はすでに再利用されるレンガの塊へと解体されている。
「CHI-NA・拆那」という作品は、あまりの速度で解体されていく北京とCHINAは、どこにいくのか?というメッセージをこめたもので、2008年のオリンピックまでに完成目標だとのこと。
こんな様に、できることなら見かけたくない「チャイ」なのだが、ある時友人に「チャイ」のもたらした面白い現象について聞かせてもらった。
その彼は「アーバン・チャイナ」なる雑誌を媒体に社会学的なリサーチをしているのだが、ある地方都市で突然「チャイ」の刻印をされてしまった家族がその主人公。
「チャイ」される家族は悪いことばかりでなく、補助金がでてバス・トイレ付のアパートに引っ越すことができる。しかもその補助金は既存の建物の床面積に比例して支給されるという。そこに目をつけたデキルお父さん。チャイされる前になんとか床面積を増やそうと、なんと5階建ての建物に改装してしまったという。先を見通す眼を持ったお父さんだが、まさか政府が「チャイやめます」といい出すとは予想だにしなかったのだろう。
そんな訳で、チャイの副産物として生み出された5階建てビルだが、そこはさすがビジョナリー・家族、ただでは起き上がらない。かつて小学校の先生をしていたお母さんは自宅で寄宿舎付の塾を開設、2、3階はそれで埋められた。4,5階は家族専用に当てられ、昔から鳩が好きだったお父さんは屋上で鳩の飼育なるものを始める。しかもそこで育てられた鳩が「中国伝書鳩コンテスト」で一等を獲得するほどになるのだから、このお父さんただものではない。
チャイをめぐる狂想曲、しばらくは皆が踊らされることになりそうだ。
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