2016年1月9日土曜日

「35歳のチェックリスト」 齋藤孝 2014 ★★


この本の存在を知ったときにはすでに35歳を過ぎてしまっていたが、「念のために・・・」と自らの今までの人生の過ごし方とこれからの時間のために「人生の棚卸し」をどうするかの参考書として読んでみる。

好きな友達と遊んで、興味のある異性とデートを重ね、自分の時間とお金を自分の好きなように使える時期から、結婚をし家族ができて自分のためだけではなく、誰かのために、誰かを守るために人生を生きるようになってくる35歳。そんな時間の過ごし方の変化は、そのまま今までの人生の過ごし方を何かしら違いを求めることになる。

「誰と過ごしているのが一番楽しい時間ですか?」と問うのは、今までどおり愚痴を言い合いストレスの発散目的だけの楽しい時間を過ごす生ぬるい友人との時間ではなく、「5年後の自分にわくわくした喜びを与えてくれる」を基準にして、自らの周りで誰がその刺激を与えてくれるのか、その人と時間を過ごすことがどう自分の明日に活力を与えてくれるのかを基準とすることとする。

これは分かっているけどとても難しい。誰もが働き盛りとなる40代に向けて、昨日よりも今日、今日よりも明日の自分が職業人としてどう向上するか考えて日々過ごすのであるが、それと同時に毎日やるべきことはたくさんあり、終われるようにして目の前の業務をこなし、それに付随するさまざまな人間関係、ストレスに追い詰められ、そんな中でどうにか息抜きと気の置けない友人とあーだこーだといいたくなるのもまたこの年代の求めるところ。

「自分の出身大学を話題にすることはありますか?」では、社会にでてすでに15年近く経った今、それでも出身大学の話で自らのプライドを保とうとするのはすでに賞味期限が切れており、それよりも社会に出てから今まで自らの実績は何かをもとに人間関係を構築すべきだと釘を刺す。フロイトを引用し「人間は生まれつき、快を求め、不快を避けようとする快楽原則を本能的欲求として持っています」という高きから低きに流れやすい人の惰性に苦言をさす。

「ツイッターやフェイスブックを頻繁にチェックしていますか?」では、誰でも日常的に友人や人生で一瞬すれ違ったような人の日常を否が応でも見せ付けられるような現代のSNS漬けの社会。その中で、自らのアイデンティティを誰かとの比較、相対的に位置づけるような過ごし方をしていれば、いつまでたっても「つながっていないと不安だ」「自分の存在感を示すために発信せずにはいられない」ということに陥りやすくなると。

「知的好奇心にブレーキをかけない」では、「何かに対して興味、好奇心が持てないと、人は閉じていきます」と著者らしい言葉で読者を煽り「知的好奇心を失った時点から、老け込んでいく。年寄りくさくなります」とばっさりと切って捨てる。「本を買うことに我慢しない」では、「知的好奇心とは、何かを吸収したいと言う意欲を持てているかどうか。知的体力は、若いころの差よりも、むしろ35歳以降をどうすごしていくかでどんどん差が開いていく部分。読書量。それから何かを習う。学ぶこと、自分へ投資し続けることをやめてしまうと、人間、頭打ちになってしまいます」とたたみかける。誰もが分かっていながらも、疲れていたり、子供の相手で忙しかったり、ネットの動画をついつい見てしまったりと、読書というある種の時間と集中力と身体の拘束を必要とする作業よりも、現代社会で他に幾らでも無料で得られる受動的で享楽的な時間の過ごし方についつい流れてしまうことを反省する。

「目から鱗」のことは決して多くはないが、35歳と自分の将来を心配して本気で自分の毎日の過ごし方に対して苦言を呈し、怒ってくれる人がいなくなる年頃にとって、こうして耳が痛いと思う言葉を胸に刻んで先の人生に向けて、今までの、そして現在の自分の日常の過ごし方を振り返る良いきっかけとなる一冊であろう。

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■目次
はじめに

【第1章】人は35歳で大人になる
1)35歳で何が変わるのか?
2)35歳は「大人」になる最後のチャンス
3)「35歳から」をデザインしよう
コラム あの人の35歳をチェックする 池井戸潤/堀江貴文/タモリ

【第2章】不安を自信に変える作法
1)人生の収穫期への準備をしよう
2)今の会社で「攻め」の姿勢を貫こう
3)30代の仕事力チェック
4)35歳、「できる人」と言われるには
5)できる人ほどポリバレント
コラム あの人の35歳をチェックする ビートたけし/安藤忠雄/奥山清行

【第3章】人生の迷いを吹っ切る技術
1)20代と30代で「幸せ」は激変する!
2)あなたが本当に「急ぐべき」リアルな理由
3)幸せを更新しよう
コラム あの人の35歳をチェックする ヤマザキマリ/菊間千乃

【第4章】35歳からの心技体の整え方
1)ビジネスマンにとって体力とは何か?
2)「疲れさせない」技術
3)ビジネスは「対人体力」で決まる
4)知的好奇心にブレーキをかけない
5)35歳で「真の花」を咲かせよう

おわりに――なぜ35歳なのか。
あとがき
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