2016年1月10日日曜日

「四月は君の嘘」 新川直司 2011-2015 ★★★★★


この数年、いろいろなところでその噂を目にすることの多いこの漫画。とにかく評価が高いのと、既に完結していると言うことも手伝って入手して読んでみることに。

なるほど確かに凄い漫画だと納得。今までの漫画のフォーマットを飛び越えて、音楽を使ってすばらしい時間やリズムの感覚をコマ割の間に挿入してくるその方法は、多くの高評価を得ているのも十分にうなづける。

漫画で描かれるすべての要素が濃縮されたそんな物語。ピアノコンクールという多くの人に馴染みの無い世界での熱狂を、リズム、スピード、そしてゾワゾワする感じを駆使して描きながら、その舞台に立っている主人公たちも、普段の生活では普通の中学生であり、その年代の子供たちが感じるどうしようもない恋の気持ちに振り回されながら、一日を棒に振り、誰かと一緒にいても、本当に好きな誰かがはっきりしてしまっている、そんな気持ちにうまく向き合えないままに日々を過ごす。

そんないくつもの物語が非常に良いバランスで複層されており、ショパンからラフマニノフへ、そしてチャイコフスキーへと曲とともにテンポを変化させながらページをめくっていく体験を強いられる。

なんとも独特な音楽を、時間の感覚を伴った漫画体験。人気に推されてズルズルと引きずらず、11巻でスパッと終えたのも、曲の長さには適切な時間があるのだと言わんばかりの心地よさを感じることになる。

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