2016年1月1日金曜日

「ジョゼと虎と魚たち」 犬童一心 2003 ★★★


犬童一心
--------------------------------------------------------
スタッフ
監督 犬童一心
原作 田辺聖子
脚本 渡辺あや
--------------------------------------------------------
恒夫(つねお):妻夫木聡
ジョゼ(くみ子):池脇千鶴
香苗(かなえ):上野樹里
幸治(こうじ): 新井浩文
ノリコ: 江口のりこ
ジョゼの祖母:新屋英子
現場主任:板尾創路
近所の中年男:森下能幸
--------------------------------------------------------
そのタイトルのせいで、きっとお洒落映画に違いないとなかなか手を伸ばすことなしに10年以上経過してしまったこの一本。CMディレクター出身の監督・犬童一心。その後「メゾン・ド・ヒミコ」や「のぼうの城」を撮ることになるということは、やはり能力のある監督であり、そのキャリアの初期に位置づけられるこの作品。

いかにもどこにでもいそうな大学生の恒夫役の妻夫木聡。雀荘でバイトし、大学でもほどほどに講義に出て、女子からもそこそこモテてなんら問題のない生活を送っている。そんな恒夫がバイト先の雀荘で耳にした噂。乳母車を押した老婆が昼時出没すると。「そんなことあるのか・・・」と思っていると、坂の上からものすごいスピードで下ってくる乳母車。かけられた毛布の下には、包丁を持った若い女。ヒロインで下半身に障害を持つ池脇千鶴演じるくみ子であり、彼女は自らのことをジョゼと呼ぶ。

そのジョゼの面倒を見るのは彼女の祖母。その祖母から「壊れ物」と呼ばれながらも、祖母が拾ってくる本を丁寧に読み込むジョゼの姿や、毎食簡素ではあるがしっかりとした食事を取る2人とともに時間を過ごすにつれて、今まで普通だと思っていた日常の世界の捉え方が徐々に変化してくる恒夫。

上野樹里演じる香苗は大学でも活発で男女から人気のあるマドンナ役。恒夫が好意を持つがどうもいまひとつ決め手にかけると思っていたが、いつの間にか障害者の女性に男を取られたと自らのプライドを保つためにジョゼと向き合い叩き合う。そこでも強気にやり返すジョゼに、世間が障害者に持つイメージを覆させられる。

ジョゼに惹かれながらそれが絶対的に自分が手を貸したり、与える側でいるという心理的な施しの思いがそれに拍車をかけているのか分からないままに、ついに結婚を前提にということで両親に紹介するために地元まで車で旅行に出かける。

海辺でジョゼを背負いながら、後に自ら「逃げたんだ」というように、障害者を妻として一生こうして手を貸しながら生きていくことを現実問題として捉え始め、今まで美しい面しかみえてなかった自分に生活をしていくなかでの手触りを持った負の部分を捕らえ始める。

そして結局は実家に向かうことなく、2人は別れ、その後恒夫は香苗と付き合うことになり、ジョゼは自分を壊れ物と罵りながらも、温かく見守りともに生きてきた祖母が亡くなった後も、一人で淡々と生きていく姿で映画は終わりを迎える。いわゆるハッピーエンドではない終わり方。いかにもそれが現実だ、それがお前たちが結局は選ぶ普通の生活だろ。と言わんばかりに。











0 件のコメント:

コメントを投稿