2016年1月1日金曜日

「つくし世代 「新しい若者」の価値観を読む」 藤本耕平 2015 ★★



数年に一度、如何にも現在社会を短いキーワードで言い表していますよという言葉が出現するようになって随分久しい。

ゆとり世代 さとり世代 つくし世代 負け犬 婚活 マウンティング スクールカースト・・・

結局どんな世界でも短いキーワードでキャッチーなコピーを持つことはマーケット的にも非常に有効なのだろうし、キーワードが定着してそれがじわじわと世間で当たり前なこととして認識を広めていくのだろう。

それにしても結局こうして、新しい言葉をある種強引に生み出すことによって、社会の中に、若者文化のマーケットの中で、何かしら新しいことが起きており、その最前線に自分はいますと世間に対してのアピールであり、その問題の第一人者としてコメンテーターとしてテレビに、講演として企業に、そして何より著書が世間に売れるようにと、仕事につなげようとするなんとも胡散臭い意図を感じずにいられないが、それでも毎日何時間もかけて現在の若者がどういう生態を持っているのか向き合っていることは事実だろうし、自分が同じように時間をかけられる訳もないので、現代の若者の動向を理解し、その彼らが主役となる社会の形をするうえでもやはり目は通しておかなければいけない一冊となろう。

「ゆとり」の次に「さとり」が来て、その後だと著者が定義する「つくし」とは、「自分たちのフィーリングで、コスパを徹底しながら、つくし、つくされ、みんなでハッピーになろうとする」だとする。

「努力が自分のためになるとは限らないし、まじめに頑張れば頑張るほど馬鹿を見ることもあるため、ほどほどに頑張って、ほどほどの生活ができればいい」という空気に覆われた世代だという。

なので「さとり世代」との定義の差異化をどう図ろうとしているかというと、コスパにとことんこだわりながら、欲望を収縮させながらも自分らしさを求めつつ、何よりも常に身近な誰かへの意識が幸福度や行動原理に組み込まれている若者たちということらしい。

その思考経路を決定付けているのは、物心ついたときから当たり前に身近にあったネット環境であり、常に誰かとつながっているという意識ありきの行動を行っているためだということか。

電通、博報堂に告ぐ大手広告代理店であるADKのマーケティングを行う著者だけに、自らの企業が行った「1本満足バー」のCMを画期的なものだと自らの著書で紹介する場合はせめてそれを手がけたのが自社だと宣言しておくほうがいいのではと思わせるところがあったり、様々な意図が隠されているのはしょうがないと思いながら、ビッグデータを活用できる巨大企業だからこそ見える様々な若者の現在進行形を知るために一読しておいて損はない一冊かと思われる。
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■目次
【序章】さとっているだけじゃない 今時の若者は何を考えている?
/広告で若者を動かすことが難しい時代
/流行や文化の作られ方が変わっている
/「チョベリバ」と「激おこぷんぷん丸」
/若者研究のスタンス
/若者たちと一緒に行う若者研究
/1992年というターニングポイント
/若者たちの「波及力」をどう活かすか?
/「ゆとり」「さとり¥だけではない、若者たちの特徴
/本書の構成

【第1章】チョイスする価値観
/若者関連事象からの分析
/なぜきゃりーぱみゅぱみゅなのか?
/「下着コーデ」「メギンス」-常識にとらわれず生み出す新しい流行
/ユニクロ+ユザワヤ
/「自分ものさし」で世の中をはかる
/お酒の飲み方も常識にとらわれない
/「個性尊重教育の第一号世代」
/クリスマスより二人の記念日
/自分らしさを「強調」よりも「協調」したい
/「世界に一つだけの花」と「ありのままで」
/ブランド感の押し付けを嫌う若者たち
/「スキマづくり」の成功事例
/一人一人に「ブランド・ベネフィット」を表現してもらう広告

【第2章】つながり願望ー支え合いが当たり前じゃないからつながりたい
/若者にとっての「宅飲み」
/スーパー銭湯とバーベキューの復権ー手軽な非日常感
/「カラーラン」「エレクトリックラン」-フォトジェニックという要素
/恋愛よりも義理よりも「つながり感」
/「街コン」と「狩りコン」の盛況
/「つながり」に関する意識の変化
/「リア充」と「ぼっち」の二極化
/「一人カラオケ」と「ぼっち席」-つながりからの開放と孤独感の解消
/つながりをサポートする「いじられ役」
/シェアしたくなる動画「バイラルムービー」という手法
/「SNSにアップしたくなる商品」という発想

【第3章】ケチ美学ー「消費しない」ことで高まる満足感
/お金をかけたいものがないから貯金になる
/「レンタル高級品」ー買わずに借りる
/「カーシェアリング」「相乗り」「シェアハウス」-見栄のための消費を嫌う
/「ハイボール」「ストロング缶」「センベロ酒場」-同じ酔うなら安く酔いたい
/「イエナカ消費」「弁当男子」「水筒男子」-外でお金をかけたくない
/消費意欲が芽生える中学時代からデフレ
/納得してお金を払う「イイワケ」が要る

【第4章】ノット・ハングリーー失われた三つの飢餓感
/物質的にもっとも満たされた時代に生まれた世代
/出会いがありすぎて「一期一会」にならない
/「ときメモ」と「ラブプラス」の違い
/「ウィル派」「三平女子」「女子会男子」-ドキドキよりも安心がほしい
/なぜ不良が減ったのか?
/「何でもあった世代」でも見たことがない新しさ
/情報過多の時代に存在感を示す工夫

【第5章】せつな主義ー不確かな将来よりも今の充実
/社会の恩恵を享受したことがない世代
/「若者ボランティア」の流行が意味するもの
/尋常ではない「若者の献血離れ」
/「即レス願望」をマーケティングに活かす手法

【第6章】新世代の「友達」感覚ーリムる、ファボる、クラスター分ける
/日本における「デジタルネイティブ世代」
/大学の入学式前から学生同士が知り合っている
/友達をクラスター分けする意識
/「リムる」「ファボる」-つながりの最小化
/「リツイート」か「リプライ」か
/なぜツイッターを連絡ツールとして使うのか?
/「つらたん」「やばたん」-タイムライン上を汚さない配慮
/つながりから解放されるための切り替え術

【第7章】なぜシェアするのかー「はずさないコーデ」と「サプライズ」
/「複数の自分のチャンネル」を持っている
/「はずさないコーデ」-自分らしさを消す方法
/「コミュ障」「自己満」「リア充撮り」-空気を読みあう意識
/テレビ番組の話題は「それ見てない」で終わってしまう
/「サプライズ」ーつながり感を高められる最高のネタ
/「チュープリクラ」「双子コーデ」「○○会」-つながりの確認作業
/若者たちが「シェアしたくなる」仕掛けを作る
/「推し面メーカー」はなぜ若者たちに受けたのか?
/「制服ディズニー」「コスプレディズニー」-非日常体験をする口実づくり

【第8章】誰もが「ぬるオタ」ー妄想するリア充たち
/8割近くが「オタク要素を持っている」と自覚
/サブアカ、趣味アカが生み出した新しいオタク像
/熱気が生じやすい「趣味コミュ」
/「初音ミク」「カゲプロ」とのコラボで成功した事例
/クリエイター心を刺激した「1本満足バー」のCM
/商品を「擬人化」させるキャンペーン
/バーチャルで妄想させる仕掛け
/「みんなはどう思っているんだろう?」を視覚化し、共有する

【第9章】コスパ至上主義ー若者たちを動かす「誰トク」精神
/使えるお金の減少=満足感の減少ではない
/「い・ろ・は・す」が若者に受けている理由
/ネットワークを活かして情報を駆使する
/「お得な情報」をシェアして感謝されたい
/「2ちゃんまとめ」「Naverまとめ」-情報収集も効率重視
/iPhoneが若者たちに普及したきっかけ
/なぜ、「読モ」の彼氏・彼女まで紹介するのか
/グルメガイドの変遷ー「顔が見えるユーザーの情報」が求められている
/「雪マジ!19」のヒット要因ー明確な「誰トク」を提示する
/年齢でセグメントする広告が効果的なもう一つの理由
/サンプリングも若者ほどシェアされやすい
/若者たちを動かす「友トク」精神

【第10章】つくし世代ー自分ひとりではなく「誰かのために」
/「自分以外の誰か」が意識されている
/「自分ごと」の範囲が広がっている
/「つくし世代」とは何か?
/冷たく合理的な時代だから「GIVE」が感動を生む

【終 章】若者たちはなぜ松岡修造が好きなのか
/「ボスとリーダー」の違い
/若者たちに共感を伝える「それな」マインド
/若者にもっとアウトプットの機会を!

あとがき
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