2015年3月5日木曜日

Innsbruck インスブルック

天気予報では山のほうは吹雪くというので、次の目的地であるお隣のオーストリアのインスブルック(Innsbruck)までわざわざ車で何時間もかけて移動してもまともに建築が見れないのでは?という不安を抱えながらも、当初の予定を変更せずにとにかく向かうことにする。

周囲の山々が徐々に壁の様にそそり立つ様に高さを持ち始めることに合わせて外ではかなり強い雪が降り出す。途中休憩を繰り返して3時間のドライブの結果到着するのは険しい山の間を走るイン川沿いに開けたインスブルック(Innsbruck)。

オーストリアのチロル州の州都でウインタースポーツで有名なこの都市は、1964年と1976年に二度のウインター・オリンピックを開催したことでも知られる人口11万のこじんまりとした都市。

今回比較的知名度の低いこの都市が目的地として選ばれたのは、たった一つの広場を実際に見るため。LAACという一昨年にメルボルンのカンファレンスでも一緒になったこのインスブルックを拠点とする設計事務所が手がけた旧市街の中心地に位置する広場であるLandhausplatz。現場打コンクリートでうねる様な滑らかな曲面を採用したその広場の素材が、実際にどのような見え方をするのか、どのような色をしているのか、どのような手触りを与えるのか、どの様な効果を生み出しているのかを実際に自分たちの身体で感じるために訪れることにする。

ウインタースポーツで有名ということで、街の北と南にそそり立つ様にして立ち上がる山の上にはスキーやスノーボードのゲレンデが広がり、北側には街からゲレンデをつなぐケーブルカーの駅、南側にはスキージャンプのジャンプ台という二つの建築がザハ・ハディドの設計という非常に珍しい建築文化を持つ都市でもある。

地理的特徴により中世より交易上の中継都市として栄え、14世紀よりハプスブルク家の支配下に入ったこの都市は、ハプスブルク家の栄光の時代と時を共にするように繁栄を極めた。その面影を偲ばせるかのように、旧市街地中心部には古い町並みが高密度で立ち並び、あちこちに歴史の舞台となった建築物がそのまま残されているのを目にするのはなんとも楽しいものである。

何よりも、ドイツからやってくると、街とその上を行き交う人々がいきなり「カラフル」になったと感じられる。街のあちこちに店を構えるファッション関係のお店も、そのウインドー・ディスプレイはなんともお洒落で色使いも楽しげで、なんとも「カラフル」である。道行く人は老若男女を問わず、寒い都市にも関わらずファッションを楽しむという心意気がその服装に表れているようで、人々の姿を見ているだけでなんとも楽しくなる雰囲気がある。

この様な感じはミュンヘンでは全く感じなかったことをこの街の中を歩いていて突然気がつく。やはり「生活の質の高さ」には含まれない「生活を楽しむことの重要さ」がある国や都市では街の雰囲気として醸し出されるのだと理解する。

そう思うと、東京は十分に「カラフル」な街だと改めて思いながら、短い滞在時間でできるだけ「カラフル」な雰囲気に身体を浸そうと心に決める。

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