2013年12月31日火曜日

プーケット ★

「一年、しっかり働いたから、束の間でも身体を精神をゆっくり休めて英気を養う」

自分が納得できるくらいよく働いたと思えるような一年をなかなか過ごすことなくこの歳まできたが、流石に今年は身体も精神もへとへとになるくらい働き詰めだったと思うので、思い切って休みを取り足を伸ばしたプーケット。

普段はどうしても安易な方へと流れてしまう読書の傾向なので、一年を締めくくるにはやはり少々ハードめな専門書をと悩みに悩んで選んだ二冊の建築本。想像していたような「波の音だけしか聞こえない静かな夕闇の中、お茶を飲みながらゆっくり本のページをめくる」というような、如何にも村上作品に出てきそうな時間の過ごし方は叶わず、結局行きの飛行機の中で読み進めただけで、リュックのなかの重しとしてしか機能しなかった重いその二冊を罰ゲームの様に持ち帰ってくることになるのだが、緩んだ神経には緩い内容が丁度いいと言わんばかりに、一緒に持っていった小説はサクサク読み進めることができた。

ワクワク感を感じながら、職業的刺激を探しあてるように向かう巡礼のような旅ではないこのような旅は、その段取りを全て妻にお任せしていたので、ホテルや行き先などの重要項目以外はほとんど知らずに当日を迎える。

現地での移動を楽にする為に、空港でレンタカーをしてホテルに向かう。という段取りだったようであるが、どうもホテルがあまりプロフェッショナルなやり取りをできず、情報が間違っていて、深夜に到着した空港のレンタカー・カウンターはしっかり閉まっているので、あれやこれやと手を尽くして結局タクシーでホテルに。

空港から1時間ほど、ビーチごとに町になっているプーケットの様子を見ながら、「これは初日にカーナビのない車を借りたところで、どうせ運転して到着するのは無理だったな・・・」と思いなおしながらホテル到着。

深夜にチェックインということで、余り英語が得意ではないスタッフに部屋に案内されながら、「この部屋の後ろの敷地で建築作業をしているので、ちょっと騒音がうるさいかもしれません」と飄々と言うので、「明日にでも他の空いている部屋を調べて変えて貰えるように頼んでおいてください」と伝えるが、どうもうまく伝わらない様子。その様子に一抹の不安を感じながら眠りにつく。

翌朝、早速ビーチに足を運ぶことにし、北京に行くからということで、水着を持ってきていなかった妻の為に水着を物色しに近くのマーケットへ。道から外れた奥にあるお店で陽気に話してくる女性の店員に話をすると、なんでも「ビルマ(ミャンマー)から来ている」と。今回の滞在中に何人ものミャンマー人に出会ったが、タイ南部にはかなりの亡命ミャンマー人がいるようである。

なんでも彼女が言うには、ビルマの情勢がやっと安定してきたから、2015年には国に戻るのだと言う。日本にもかなり多いミャンマー人。「いつかぜひ行って見たいんだ」なんて言いながら「今日最初のお客なんだから・・・」なんて中国式の値段交渉で水着とパレオを安く購入してビーチに向かう。

街中では多くの外国人がスクーターをレンタルして足としているようなので、ついでに道すがらのレンタルバイク屋を覗いてみると、上のフィットネスクラブに入って来い。という看板が。

入っていくと、筋肉が盛り上がったシベリアンハスキーのような獰猛な目をし、頭の上からびっしりと刺青の入った軍曹の様なロシア人が対応してくる。普通こういう人は見かけと裏腹に優しいものだと思うがいやはや。「スクーターに乗った事があるか?」と聞いてくるので、「電動スクーターだけど毎日乗っている」と答えると、「俺は、乗った事があるかとだけ聞いたんだ」と、「YesかNoだけで十分だ」と言わんばかりの圧迫感。「満タン返しを忘れるな」と言う言葉を聞きながら、逃げるように外にでる。

外にでて、「あれはどこかの傭兵だったに違いない。絶対に人を殺している目をしている。」なんて勝手に想像を膨らませ、近くのレストランで本場のトムヤンクンのスパイスに舌を痛めながらプーケット生活を開始する。

街中がロシア人とロシア語に覆われているのに驚きを感じツーリズムの恐ろしさを実感しながらも、滞在したカロンビーチからスクーターで南に足を伸ばして、プロンテープ岬やラワイビーチ、プーケットタウンなどを巡りながら妻の調べたレストランなどに向かう。

ガソリンスタンドのおじさんに「これで満タンだよ」と言われて夜に軍曹にスクーターを返却しに行くと、貸し出しの時には何の確認も無かったくせに、無言のままに隅々まで傷をチェックしだし、ガソリンタンクに指をつっこみ、「貸したときは第二関節だったが、今は第一関節だ。満タンといったのに満タンではないので追加料金だ」と何とも理不尽な事を言われるが、こんなところで殺され熱帯魚の餌にされるのも癪なので、さっさと払って後にする。

翌日はホテルで紹介しているツアーに参加し、ピピ島にも足を伸ばしたりしながら、それなりにツーリストらしい時間を過ごし、よくよく考えると野菜が非常に少なく、一辺倒なタイ料理にそろそろ胃腸と舌がやられはじめていく。

軍曹とは違って感じのいいタイ人のレンタル屋でスクーターを借りて、更にいろいろと足を伸ばしては、「今年は一体何日、夕日を見ることがあっただろうか」と思いながら沈む夕日を見ながらレモンジュースで喉を潤す。

何もしない事を目的にするならば、プーケットの様に開発の入ったところで、ビーチ・アクティビティーや色んなツアーのあるようなところではなく、本当に何もする事がないくらいの僻地に行かない限り無理だろうと思い知りながら、押し寄せるツーリズムの波の強烈さを身にしみて大晦日の北京に向かって帰ることにする。















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