2012年1月27日金曜日

夜行バス

現代の日本で建築事務所をやっていると、否が応でも支出をどうやって減らしていくかを考えないと、本当にあっというまに事務所を閉める羽目になる。

大阪までの出張でも、お客さんからは一人分の経費で計上させてもらっているので、スタッフに引継ぎの為に二人で行かなければいけないといっても、

「はい、そうですか」

なんて、二人分をお願いできるわけも無く、かといって赤字を出して二人で新幹線で行くわけもいかない。それにいつか自分で事務所をやっていくことになるスタッフに設計事務所としての経済観念を分かっていてもらうためにも、二人して夜行バスで向かうことにする。

深夜に新宿西口から出発し、早朝に大阪・梅田駅に到着し、一人4000円ほど。一人で大阪に行くよりもやや安くあがるので、その分仕事終わりで少し大阪で飲みに行こうということに。

夜行バスに前に乗ったのはいつだったか?と思いながら、二人で軽く居酒屋で飲んで準備をし、乗り込むバスは、寝ている人もいますから、と携帯の液晶を光らせることも、カーテンを空けて外を見ることもできない、完全に密封状態。

たまたま大阪行きの夜行バスで、隣に乗り合わせて会話が盛り上がって・・・

なんてことは、まったく起こりうることもなく、客同士のトラブルも、会社に対するクレームも排除するために、それが起こる前の段階で、100%他者との接触を起こさないようにする規制緩和後のバス会社の戦略に見える、いかにも現代の日本。

揺れる真っ暗な車内で、身体のあちこちが痛くなりながらも、侘しい世の中になってきたもんだと眠りに落ちる。


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