2010年5月29日土曜日

「都市の政治学」 多木浩二 1994 ★★★★

「都市論」に関する書物の中で現代的問題を具体的視点を持ってこれだけ分かりやすく批評している本は久々に手にしたように思われる。

何といっても、「第一章 都市の現在 ー ゼロをめぐるゲーム」における「2 あたらしき悪しきもの」と「3 コンビニ繁盛記」。「第三章 都市の世界化ー外部化される都市」の「2 エアポートの経験」はまさしく現代を表象する現象であり、建築と社会が向き合っていくべき課題であろう。

読めば読むほど、「都市」というものが多様な要素にて構成され、それぞれの要素が複雑に絡み合いながらバランスを変え、一瞬一蹴姿を変える、なんとも捉えにくい対象であるのが再認識される。

欲望、消費、ネットワーク、スケール、イベント、文化、ゲーム、空港、開発

本書で語られる側面だけでも非常に複雑なバランスで都市が成立しており、何をどう操作すればどんな変化が生まれるのかを予想するのは非常に難しい作業だということを理解する。

それでも、都市無き現代社会が成立しない以上、どんなに困難でもそれを理解しようとする作業を諦める訳にはいかず、どれだけ表皮が重なっているのか分からなくとも、こうして一枚一枚丁寧に都市という表皮を剥いていくことをやめてはいけないのだと改めて理解する。

以下、本文より抜粋する。
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序章 都市を考えるために 
都市を巻き込み、世界が変わりつつある 
パスポートという一枚で検閲保証 他のエアポートとのネットワークに依存 世界都市 
交通手段の変化による世界の変質 

第一章 都市の現在 ー ゼロをめぐるゲーム
1 欲望のかたち
都市とは欲望を住処にして人間が夢と覚醒のあいだの日々を送る場所

愛を基礎にした結婚と資本主義との関係 核家族 個人の愛を基礎にした結婚 個人を成立させた資本主義文化のひとつ 
資本主義以前 部族全体や家族の関係できまる 
医療の進歩 子供の死亡率の減少 子供が社会に認識 
郊外ニュータウン 核家族の一大集団 

2 あたらしき悪しきもの
消費のスタイルー商業が都市を揺るがす  商品が溢れる都市 
ベンヤミン 19世紀パリ パサージュ  商業 当時は悪しきもの 全天候型の都市出現 全時間型 夜が変わる 商店街と交通路の分離 都市と商業施設 建築家長く低くみてた 
パサージュからデパート スーパーマーケット 
資本主義都市で買い物のパターンがどう変化 
パサージュ 1870年代のデパートで意味失う  
買い物パターンが変化する デパートからスーパーマーケットへ 

3 コンビニ繁盛記
コンビニー新しいエコノミーの誕生 
便利さの追求 買い物の極小化 
コンビニ 複合施設 ショッピング・センター   

コンテナーのネットワークがひろがる    
プラグ・イン 規格化されたコンテナ 誰も客を誘惑しない 商品の貧困さ 情報社会の申し子 単身者を主な対象 冷蔵庫の延長 

都市の最小スケールである私的生活の一部に都市を組み込み、あるいは最大スケールである都市の仕組みに私的な空間が組み込まれる 

消費社会が基盤とした差異化 
浪費という概念成り立たない 欲望の変質 貧困化 コンビニは想像力を刺激しない 

情報社会がコンビニの成立条件 都市を均質体験 どこにいっても見たことがあるコンテナ コンビニの成立 コンピューターのネットワークができてから コンビニのレジは本社のコンピューターの端末

4 ユートピアなき文化
カーニヴァルからイベントへ 
いろんな活動があつまって総体として現れる かつて形式が先行 形式を背景に活動が意味を持つ 
地域性を無視するメディアの支配 
東京オリンピック 改造する為 イベントは文化的でなけてばいけない 
テーマ・パークというモデル ゲームの都市化 
地方性の消失 擬似イベント 

第二章 都市の政治学ーネーション・ステートの首都からの変貌
死の場所 もうひとつのユートピア 強制収容所 アウシェヴィッツ ビルケナウ 絶滅都市 消費は無 効率的焼却炉 

第三章 都市の世界化ー外部化される都市
1 都市が混じり合う
都市より大きな単位が現れる

2 エアポートの経験
都市をつなぐ旅
旅の持つ意味 都市は出発点 目的地 鉄道 自動車 飛行機 
鉄道の発達 空間の経験の様相 機械的速度 カントの空間概念 地理的認識 軍隊輸送 国境の経験 フィクション 世界は異質性 船舶へ接続 世界を一体化 ジョール・ヴェルヌ「80日間世界一周」 
19世紀ブルジョアジーの歴史意識 鉄道 都市に駅 
日本 通過駅 
ネーション・ステートの首都の駅 終着駅 
鉄骨とガラス 古典的様式のファサード 

エアポートー主体と他者
都市からはみでた場 
飛行機の旅 
地球の経験を変えた 
都市と都市をつなぐ旅の印象を希薄化 
エアポートぁらエアポートへ旅 
飛行機のなか 無能な身体 拘束される 
国境を経験しない 孤立した場
 現代という時代に顔を与えるのは空港ではないか 

空港での二つの経験 
主体と他者の関係 権力空港 
普段感じない国籍 パスポート 政治空港の経験 管理下 
都市を超えた都市 空港が都市と遠い 

3 巨大開発が進むとき
世界の都市が似てきた
似たような再開発計画 同時性 
よく似た風景 1960丹下 東京計画 
建築がつくる原風景の喪失 原風景 世界になんらかの根拠を残す 

ロンドンのドックランド
19世紀の港湾開発 風景としての都市の貧困化 
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目次
第1章 都市の現在
1 欲望のかたち
2 あたらしき悪しきもの
3 コンビニ繁盛記
4 ユートピアなき文化
5 物の世界
6 危ない都市

第2章 都市の政治学
1 ネーション・ステートの首都
2 ユートピアが可能であったとき
3 力の政治学

第3章 都市の世界化
1 都市が混じり合う
2 エアポートの経験
3 巨大開発が進むとき
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