2016年2月5日金曜日

圓教寺(円教寺、えんぎょうじ) 966 ★★★★


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所在地 兵庫県姫路市書写2968
山号  書寫山(書写山)
宗派  天台宗
寺格  別格本山
創建  康保3年(966年)
開基  重源
機能  性空
別称  西の比叡山
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せっかくの機会だからと相当にアグレッシブに、早朝6時に起きてホテルをでて、山道を2時間飛ばして播磨国の一宮である伊和神社まで足を伸ばし、境内にて朝日を浴びようと企てていたが、一日かけて兵庫を東から巡ってきた疲れと、深夜までの仕事のせいで、目が覚めたのがすでに7時。さすがに伊和神社は諦めてせめて、一番客で参拝しようと向かったのは「西の比叡山」と呼ばれる名刹・圓教寺(円教寺、えんぎょうじ)。

どうやらロープウェーでなければ寺にアクセスできないという情報を事前に調べていたが、いまいち分からないままにナビに導かれて向かう先は、姫路の街の北の外れ。そびえる書写山の裾野にポツンと置かれた駐車場とその近くにあるロープウェー乗り場。

やはり一番客らしく、ロープウェー乗り場でチケットを買っても、「まだ早いからあと10分ほど待っててくださいね」と係りのおばさんに言われ、「上までどれくらいかかりますか?参拝はどれくらいで回れますか?」などと質問をしていると、「こちらのストーブで暖まっていてください」と案内の冊子を渡される。見てみると、どうやら「駆込み女と駆出し男」や「ラストサムライ」、そしてNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」などのロケ地としても使われた寺院であるという。その冊子の片隅に、なんと先日中国で見た映画「黒衣の刺客」で、「なんて素晴らしいところが残っているんだ・・・」と感動し、劇後のエンドロールで、それが日本の寺院だとしって「やっぱりなぁ・・・」と思っていたあの寺が、なんとこの円教寺だったのだとしって、朝から一気にテンションが上がる。

そんなこんなしているうちに、最初の便が出発するというので乗り込むと、先ほどのおばさんがガイドとして乗り込み、「あちこち回られているんですか?」と聞かれるので、昨日の行程と今日の予定を伝えると、「それは駆け足ですねぇ」と言いながらも、「あそこのお寺さんもいいですからねぇ」といかにものんびりと、地元情報を教えてくれる。山頂駅につくと、すぐ進んだところにバスが停車しており、先ほどのおばさんによると、歩いていくと中心地まで30分近くかかるというので、時間短縮のためにバスに乗り込む。これも早朝のために一人で出発し、相当な坂道を登っては下っていく。「これを往復してたら朝から相当に体力を消耗していたな・・・」と帰りもバスで戻ることを決定する。

この円教寺、天台宗の別格本山であり、西国三十三所のうち最大規模の寺院であり、「西の比叡山」と呼ばれ寺格は高く、かつては比叡山、大山とともに天台宗の三大道場と称されたという。その理由が分かるように、書写山の深い山の中に散らばるようにして様々な建物が散らばって配置されており、それらを巡るように参拝していくことになる。全体配置はロープウェーの山頂駅からすぐ近い仁王門から十妙院にかけての「東谷」。そしてバスで送り届けられたあたりに位置する摩尼殿(観音堂)を中心とした「中谷」。最後に一番奥、つまり西側に三つの堂(三之堂)や奥の院のある「西谷」と区別されている。

参道を進んでいくと、前方上空に浮かぶようにして突き出している摩尼殿が視界に飛び込んでくる。その色合いや風景との溶け合い具合など、朝一番に目にする風景としては格別のものであり、テンションは再度上昇する。懸造 (かけづくり)と呼ばれるように、急峻な崖や山の斜面にへばりつくように建てられた寺院建築の形式を採用しており、お堂の中から外に向けての開け放たれた風景は、柱と庇によって見事に切り取られた風景画として目の前に広がる。この堂はもともとあったものが1921年に焼失したために、再建の為に建築家の武田五一(たけだごいち)が設計を担当したという。この武田五一は数年前の朝ドラの「ごちそうさん」で東出昌大演じる悠太郎に大きな影響を与え、京都大学の建築学科を設立するなど「関西建築界の父」と呼ばれた大建築家である。「急峻な崖や山の斜面にへばりつくように・・・」とういことでイメージされるの京都の清水寺本堂も、もちろんこの懸造に分類されることになる。

そんな摩尼殿からは下の参道に戻って西に向かうのもいいが、山沿いに細い道を沿うようにして西へと向かう道もあり、朝から素晴らしい風景を体験してすっかり気分もよくなったので、「黒衣の刺客」ばりに、一人すり足で山の中をスタスタと進んでいくと、先ほどの縦への視線の変化に対し、今度は水平の広がりを感じさせるように3つの異なるお堂がコの字のように向き合うようにして中心の広場を形成している「西谷」に到着する。こここそ、あの「黒衣の刺客」の撮影場所であり、映画のシーンがよみがえるように、素晴らしい緊張感を持った空間に入り込む。

北に位置する一番大きなお堂が大講堂、西側に食堂、そして南に常行堂が位置し、朝の強い東からの光を受けて、食堂以外の二つのお堂はその庇の下の空間が暗い陰でほぼ見えなくなり、まさに陰影礼賛の世界を作り出している。この三つのお堂を総称し、「三之堂(みつのどう)」と呼ばれているという。誰もいない空間はまさに時空を飛んだかの様な気持ちにさせてくれ、駆け足で巡ってきた分しばし、一人で軒先に腰掛け、周囲の森の音に耳を澄ますことにする。

大講堂と食堂の間を抜けてさらに西に進むと、少し坂を下ったところに、今度は少々小さめのお堂が幾つも寄り添いながら建っている「奥之院」へと到着する。ここが境内の一番西の端になる。朝一番、誰もいない中で境内を巡れたことに感謝しながら手を合わせ、今度は下の参道を巡って中谷へと戻っていくと、右手にもいくつか苔むした素晴らしいお堂がちらほら視界に飛び込んできて、最後まで飽きることなく参拝しながら巡ることができる。

予定の時間通りにバスが来て、ロープウェー乗り場まで戻るとこちらも予定通り下山の便に乗ることができ、例のおばさんに、「早かったですね」と言われながら、「いやー、朝から本当にいいものを見せていただきました」と心からの感謝を伝えて、「それは良かったです。良い一日を」と気持ちの良い見送りをしていただき、次の目的地へと汗を拭きながら足を進めることにする。


















































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