2015年3月5日木曜日

Kaufhaus Tyrol Department Store David Chipperfield 2010 ★★★


素晴らしい広場を体験し、せっかくだからと旧市街へと足を向ける。一歩足を踏み入れるとこの通りがこの街目抜き通りだと一発で分かる人の賑わいを見せるメインストリート。

その中心に位置しているのがこの街の象徴的な百貨店であるKaufhaus Tyrol Department Store。そのリノベーションを2010年にDavid Chipperfield(デイヴィッド・チッパーフィールド)が手がけたというからぜひとも訪れることにする。

こうした密度の高い歴史的な街並みにおいては、建物の四面性を出すことは難しく、どうしても「ファサード」のデザインが主題となる。その時になんら派手な手法を用いるのではなく、インスブルックらしく品の良い街並みのリズムとスケールを踏襲しつつ、素材の使い方と壁、柱、床と分割された建築エレメントに開口部として二次的な要素がまとわり着くのではなく、それらをすべて同次元にて処理することで非常にミニマルに統一されたファサードを作り出す。

そこまで白紙還元してから、再度街路に合わせて少しだけファサードを折り曲げることによって、後部に隠れた残り二つのボリュームを前面に醸し出す。非常に品の良い手法である。

なんといっても目を引くのは、最近チッパーフィールドが多用するテラゾ(terrazzo)の様に見える石や大理石の砂利を含んだプレキャスト・コンクリートで覆われた床や柱。継ぎ目がないために、「まるで一体の大きな石から切り出してきたのでは・・・」というなんとも優雅な表情を見せてくれる。

ニュートラルなファサードに、結構ビビッドな色の照明が使われていても、全体としての品の良さは決して失われない。後ろに回って、今度は酸化アルミニウムを使って全く違った表情を纏ったもう一つのファサードを見て、その豊かな設計手法に感心して旧市街の中心へと足を進めることにする。










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