2015年2月21日土曜日

高知駅 内藤廣 2009 ★★★


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所在地  高知県高知市栄田町
設計   内藤廣
竣工   2009
機能   駅舎
規模   地上3階
構造   木造・S造(大屋根)・SRC造(北口キャノピー)
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日のある内に建築をできるだけ回ろうとするとなると、朝の時間を活用することになる。図書館や美術館などの公共建築はどうしても開館が9時や10時となり、日の出からそこまでの数時間を無為に過ごすのはどうしても許されない。

そんな訳で、その時間でも建築を体験できる場所に足を向けることになる。それが寺社などであるが、建築の中でも人の営みと時を同じくして時間を動かし始めるタイポロジーがこれに入る。その一つが駅舎。

現代社会においては、駅という国に引かれた都市を繋ぐ線分が人と物の移動を促進し、繋がることが価値を作り出すと言う鉄道網が国の地勢図を大きく書き換えた。中世までの徒歩や馬といった限られたスピードからもたらされる移動距離で長く保たれた地勢図は、圧倒的な動力に支えられたスピードを持った鉄道の前に、多くの地域がその存在感を消していったのは間違いない。

縮小社会を向かえ、コンパクトシティの必要性が叫ばれる現代日本においては、地域拠点としとなる有力な地方都市の中でも、その地域活動の拠点となる場所が全体としてネットワークに結束するこの駅舎。

その駅舎をどう街の中で位置づけていくか。その駅舎を中心としてどうやって新しいこれからの都市像を描いていくか。利権にまみれて、何もしなくても困ることの無い収入を得ることを覚えた駅前商店街の地主たち。高齢を迎えた彼らが自らの利権を守るために、本当は人を呼び込み、人を動かす活力としてあるべき都市の魅力である駅前空間が廃れて久しいのは、日本全国どこでも見られる光景である。コンビニと同じくらいに風景の一部となったその駅前の空間と、いったいどこの都市が変えることができるのか?

そんな期待感がありながら、どこの都市も答えを見せることができないままに、建築を、都市を相手にする建築家が自らの職能の限界を感じながら忸怩たる思いをしてすごしていたこの10年。

そんな中、先見の明のある行政のリーダーと、自分の世代よりも子供たちの世代にこの都市が魅力的な場所であることを願う地域の人々の行動力があり、はじめてその本丸である駅舎の改築という都市の顔を変える大事業が動き出す。

鉄道が線である限り、都市という面の広がりを持つ空間をどうしても二つに分断してしまう。それが現在の技術においては、駅舎を地面から持ち上げることにより、地面レベルを自由にし、水平方向のつながりを再度都市の中に取り戻すことが可能となった。

駅の北/南、駅の東/西という分断から、線分による制限が無くなった都市が繋がることにより、どれだけ大きなインパクトを都市にもたらすか。その価値をしっかりと分析することができ、今までとは全く違った都市の未来、都市の玄関口の価値を作り出すことに一歩踏み出したこのプロジェクトの関係者の勇気を感じずにいられない。

そんな訳で、朝の6時に起きてホテルをチェックアウトし、都市に生きる様々な人間模様が交錯する早朝の駅に向かい、入場券を購入してプラットフォームに。県産材の木材を利用して作られた木造の大屋根と杉板型枠で統一感をもたらしている足元の打ち放しコンクリート。「日本の駅」というイメージを全く覆す風の通り抜ける街に開かれた駅舎。こんな場所から、新たに生活を営む都市へと向かう電車に乗り込むのは、きっと素晴らしいイメージとして地元を記憶させるのだろうと想像しながら、階段を下りていくことにする。

1984年 ギャラリーTOM(東京都)(34歳)
1992年 海の博物館(三重県)(42歳)
1997年 安曇野ちひろ美術館(長野県)(47歳)
1997年 うしぶか海彩館(熊本県)
1999年 十日町情報館(新潟県)(49歳)
2002年 フォレスト益子(栃木県)(52歳)
2002年 ちひろ美術館・東京(東京都)
2002年 九谷焼窯跡展示館(石川県)
2004年 みなとみらい線馬車道駅(神奈川県)(54歳)
2005年 島根県芸術文化センター(島根県)(55歳)
2006年 二期倶楽部 七石舞台【かがみ】
2008年 日向市駅と駅前広場(宮崎県)(58歳)
2009年 高知駅(高知県)(59歳)
2009年 山代温泉「新総湯」(石川県)
2010年 和光大学E棟(東京都)(60歳)
2010年 練馬区立牧野記念庭園(東京都)
2011年 旭川駅(北海道)






















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