2015年2月18日水曜日

ほうとう不動 保坂猛 2009 ★★

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所在地  山梨県南都留郡富士河口湖町河口
設計   保坂猛
竣工   2009
機能   商業施設
規模   地上1階
構造   RC造
敷地面積 2493㎡
延床面積 726㎡
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3次元曲面を使った建築形態を採用しようとすると、実際に今までどのような建物ができているのかを調べ、技術的にどのような施工を採用し、どのような設計をしているのかを分析することになる。

その様な意欲的な建築となると世界でもそれほど多くの作品があるわけではないと分かってくる。実際に自分たちで作品として作り出していこうとすると、クライアントの予算の問題、施工的な技術可能性の問題、その後のメンテナンスにかかる手間の問題等々、様々な問題が見えてきて、「こういう難しい形態を採用する意味は本当にあるのだろうか?」という根源に戻る問いかけを何度もすることになる。

その際に実際に出来上がっている作品があるとういのは、「世界では誰かが実際に成し遂げているから、我々にできないはずがない。アイデアと知識が足りないだけだ」と背中を押してくれることになる。

そんな訳で現在進めているプロジェクトの参考作品として詳しく調べてことのあるのがこの作品。富士山の麓ののどかな風景の中にいきなり現れたエイリアンの様な建築。構造や、表面の施工などネットで集められる情報は随分調べたが、実際に使い始めてこのような形態が、厳しい自然の環境下においてどのような振る舞いをするのか、そこから見えてくる問題点を設計段階でどう解消しておけるのかを見て取るためにぜひとも実際に見てみたいと思っていた建築である。

大雪のために予定していたルートを大幅に変更し、すでに雪が積もってあるであろう峠をできるだけ通ることなしに市街地へと抜けていく為に幹線道路沿いのコンビニに車を入れて地図を見ようとしていたら、その隣の敷地に見えてくるのがこの建物。

なんとラッキーな。

と思い、「ちょっと外の空気吸ってくるわ」と妻を車内に残してカメラ片手にこそこそと車を後にする。15近い目的地を予定し、早朝から行動を開始したために未だに朝の9時。ネットで調べてお店に電話しても「10時に開店します」といわれるので、しょうがなしに周囲とガラス越しに内部の様子を覗き見ることにする。

水とセメントや砂利を混ぜて粘性を持たせ、型枠という器に流し込んで水気を飛ばし乾燥させ、固化させるのがコンクリートな訳なので、器の形によって形を変える水と同様に別に水平垂直である必要は無い訳である。ただそれが経済的であり、より手間がかからないということを除けばの話であるが。

有機的な形態を現場打ちコンクリートで作り上げること。また構造的にシェルを構成して全体としてもつようにして内部の柱をできるだけ取り除いて開放的な空間にすること。これらのアイデアと試みは建築の歴史の中でも何度も行われてきたことであるが、やはりそれを可能にするための場というのは国家的プロジェクトや、都市のアイコンとなる文化施設やイベント会場での試みが多かったのに対し、こうして一民間のクライアントでしかも大都市ではなく、のどかな風景の広がる田舎で実現されたこの作品の持つ意味は、その概観のもつインパクトよりもよっぽど大きいと思わずにいられない。

先進的なアイデアを持っていれば、先進的なクライアントがどんだけでも予算を出してくれる訳でもなく、自らのアイデアを実現させるために、構造、予算、施工、機能性、様々な問題点をクリアしていくこと。その中でクライアントを説得し、価値とビジョンを共有していくこと。それをほぼ同年代と呼んでよい設計者である建築家が想いを持ち、それを曲げずにやり遂げ、実現させたことは、日々を同じ困難に向き合っているものとして賞賛を送らずにいられない。

設計者としての能力の高さだけでなく、人々を巻き込んでいき、最後までクオリティーを保ちながら世に送り出すまで全体を統括していく人間力の高さを感じながら、今度は設計者として設計の過程でどんな困難があり、何が検討され、どういう想定の元で決定を繰り返し最終的なモノとして作り上げたのか、担当者レベルの視線でぐるぐると建物を巡り、車で待つ妻の下へと足を向けることにする。










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