2015年1月14日水曜日

Japanese Junction 「Emerging Trajectories」

海外に出て建築を学び、その後海外若しくは日本国内にて建築の実務を積み、独自の建築活動をしている若手建築家の活動内容を紹介するという展覧会が開催され、その一環として開催されるイベントにゲストとして招待していただいた。

「軌跡(Trajectories)」というキーワードを元に、留学前の日本での時間、留学中の海外での時間、そして留学後のその後の時間と「軌跡」を辿ることで、建築に関する考え方だどのように変化し現在に至るのかを、4名の展示参加者にスライドを使って説明してもらうという主旨のイベントである。

そこに私も招待され、同じテーマに沿って話をして欲しいとのことでお誘いをいただき、少しでも今までの自分の経験が若い人や学生にとって何かしらの意味を持てば本望だと、スケジュールを調整して弾丸ツアーで東京に向かうことにした。

イベント当日に、トーク会場とは別に用意された展示会場に足を運び、4名の展示者から事前に展示作品について説明を受け夜のイベントに備え、その後会場のSHIBAURA HOUSEへと移動し、打ち合わせなどをしながら夜のイベント開始を待つことに。

アメリカやヨーロッパの大学や大学院に渡り、その後現地の建築事務所に就職したり、また第三国に渡り建築に携わったり、帰国して日本の設計事務所に勤めたり、また日本国内で自分のオフィスを始めたりと、4名のまったく違う辿ってきた軌跡を聞いたのち、「何を話せば彼らにとって一番意味のある時間になるだろうか」とこの数週間仕事の合間に頭を巡らせては話の主題を考えてきたプレゼンを開始する。

開始時間が遅れたために少し時間がおしていたが、45分間も時間をもらっていたので十分終わるだろうと思いながら話を進めるが、気がついたときには既に1時間を超えるほど話してしまい、スピードを上げて切り上げることに。

その為に出展者とのディスカッションの時間が十分に取れなくなってしまって大変申し訳ない思いをしてしまったが、それよりも少し上の世代で、同じような時間と苦悩を経験してきた建築家として彼らが今必要であろうと思われるメッセージはプレゼンテーションの中で十分に伝えられたかと思うので、それで相殺してもらうことにする。

トークの中でも何度も繰り返したが、海外に出て建築を学ぶことの一番の利点は、「もし海外に行かなかったら過ごしていたであろう日本での時間。その時間の間に建築家として成長したかもしれない自分の姿」を常に意識することであり、向き合う建築の実務の内容が違い、自分の思い描いていた建築家像と現在の自分の姿とのギャップが徐々に偏差していく中、その「いたかもしれない自分の姿」との競争に負けることなく、緊張感を持ちながら現在を過ごし、そして成長していく明確な指標を持って日常を生きることであろうと思う。

日本ではできないようなプロジェクトを海外で経験したとしても、日本で経験すべき建築の実務が抜けてしまっているのではという恐怖。

外から見る日本の現状は良く分かるようになったとしても、日本の深いところからプロフェッショナルとして建築に向き合う能力が備わったかという自問自答。

そんな「仮の自分」の姿をより正確に描き出すためには、日本に留まりブレることなく真摯に建築に向き合い、建築家としての職業的能力を高めている尊敬する友人がいい基準となってくれるはず。

そんな「仮の自分」の姿にプレッシャーを与えられながら、内からと外からの二つの視線を合わせ持ちながら成長していくこと、それこそが海外に出て建築に向き合う本質なのだと改めてのこのイベントを通して理解する。

ぜひとも、今夜の時間が、この場に居合わせた誰かの軌跡にとって重要な意味を持つ「磁場」となることを期待して、その「磁場」の影響を何年後かに目の当たりにすることを楽しみにしておく。

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