2014年4月19日土曜日

大栄ビルヂング ポール・ルドルフ 1973 ★


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所在地  愛知県名古屋市中区栄
設計   ポール・ルドルフ(Paul Rudolph)
竣工   1973
機能   オフィス
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建築を学ぶものであれば、学生時代にヒーローと呼べるような建築家がいるものである。一枚のスケッチや平面図、パースなどから圧倒的に心を奪われる建築作品。自分にとっては、それがポール・ルドルフ(Paul Rudolph)であった。

20世紀とともに生きたアメリカ人建築家。微妙な高低差によって建築の中に豊かさ空間を作り出し、それを独特の断面パースによってそこで起こるであろう豊かな人々の活動を描き出す。そして全体はブルータルでいながら、人の手が入ったと思わせる絶妙なプロポーションを描き出す。

そんな訳で横に彼の断面パースを置きながら、夜な夜な製図版に向かっていた頃のことを思い出す。そしてかつて訪れたアメリカのイェール大学の建築学部の建物もやはりその後学長となるルドルフによる設計で、そこで大学院時代を過ごしたパートナーに説明してもらいながら建物のあちこちを回っては現役の学生の作業を見て回った。

そしてシンガポールでのルドルフの傑作である「The Concourse」。シンガポールの気候に合わせ、構造体にボックスとスラブが突き刺さるようにし多様な開口部をもうけることで、豊かな外部空間と自然喚起をもたらす美しい高層ビル。

そんなルドルフ体験を思い出しながら足を向けたのは、彼にとって日本初となるプロジェクト。それがなぜこの名古屋にあるのかは謎であるが、それが40年以上たった今も現存しているのはありがたいことである。

それにしてもこの建物。なかなか情報が無く正確な場所が分からず、なんども周辺をぐるぐるしながらやっと見つけることができた。世界的な建築家が日本の込み入った都市条件の中でいったいどんな解法を見せてくれるのか?そんなことを期待していたが、やはり日本の資本主義の力は強力で、周辺の建物同様に、敷地いっぱいに建築面積をとり、斜線制限にそって外形が決められて、後は入り口と表層の勝負という感じ。

敷地を見ればやれることは限られていたのだろうと納得してしまうが、内部には何か特別な空間でもあるのだろうかと少々の期待を残して敷地を後にすると、渡る道の先に先ほど寄ってきた名古屋市科学館のプラネタリウムがデカデカと宙に浮いている姿を目にし、これこそ都市の美しさだなと納得して先を進むことにする。








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