2014年3月7日金曜日

「人に強くなる極意」 佐藤優 2013 ★★

30代も中ごろになれば、誰でも毎日相当に気を遣って生きることになる。そんな中でも建築家なんていう様々な人の狭間に立ち調整をしなければいけない職業で、しかも常識が常識でない国で、不条理に思えるような仕事の進め方をしている事務所ではその気遣いは尚更となる。

各チームで担当部分を行っているスタッフの意見を聞きながらも様々な可能性を検討し決定しながら、パートナーの意向を踏まえてプロジェクトを発展させていく。幾つも並行するプロジェクトの為に、コンセプトから現場まで様々な建築の苦しい場面をすべて抱え込んで日常を過ごす。

そんな中でも家に帰れば、仕事とは関係ない家庭の関係性をしっかりと保たなければいけないのが現代人。

一日とも休まることなく、ひたすらに日常を送っていく。そりゃ胃も悲鳴を上げて、ストレスから下血もするよと苦しんでいる時に、ふと本屋で目に止まったこのタイトル。

「これはひょっとして現在の状況に助けになるようなヒントが書かれている?」

と神にもすがるような気持ちで購入。久々にブックオフ以外で購入する新書。さっさと読んでみるが、がっかりして本を閉じる事になる。そういうことではなく、もっと本質的に、そして実践的な事がかかれているかとハードルを上げすぎていたようである。

もっと直接に、「あなたが大切だと思ったり、完璧にこなそうと思ったり、それをやらなければ他の誰かにやられてしまうかと思ってストレスを感じている殆どのことは、あなたが思っているよりも大したことはないもんです。それがうまくいかなくても、世の中誰も死んだりしません。だからある程度まで自分を追い込んだ後には、「はい、ここまで」と線を仕切り、近眼的な時間の過ごし方をするのを止めましょう」なんてことが書かれてあるのかと期待していたがそうではない。

内容を見ていくと、
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近未来、日本が大きな変化に巻き込まれることを想定
二つの異なったベクトル
1 グローバリゼーションの本格化 ヒト、モノ、カネが国境を越えて行き来するようになる 弱肉強食の新自由主義と相性がいい
中国やインドの労働者やエンジニアとの競争が激化する
伝統的な終身雇用制度を維持していては、日本の資本主義が生き残っていけない
特殊な技能を持つ人を除いて、日本人の賃金は低下していく
2 国家機能の強化 領土
正社員として働く事は一層難しくなる
状況に対応できる人間力を強化する
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この部分の前提に対してはまさにその通りだと賛同できる。世の中は日本人の様に最終的に優しい人間ばかりではなく、少しでも利益を吸い上げ、それを独占し、他人を蹴落とそうとするような獣のような輩と戦っていかなければいけない時代が既に到来しているという事実。

相当に大きな企業でなければ、年齢と給与に見合った職業的能力を身につけていって無い人間はあっというまに見捨てられてしまい、身内の枠から外れて荒野に放り出される。日本で若者の餓死者が出たり、治安が極端に悪くなったりする地域が現れるのもそう遠くは無いだろう。

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第一章 怒らない
/よい物語で人生を疑似体験する
書物、特に小説を読むこと。あるいは映画でもいい。
要はそれらを通して、さんざまな人生を代理経験する。
選ぶのは人間の喜怒哀楽を描いた作品。

/かつてないほどイライラが満ちている世の中
世知辛い国際社会
同じ労力でも、明らかに一昔前より実入りは少なくなっています。一生懸命働いているのにいつもカツカツ。
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要は自分の中に多様性を持った考え方、捉え方、人間関係の構築の仕方を取り込んで、様々な想定外の場面に対応できるような弾力性のある人間になるということ。相手の事を慮る想像力、知性に欠けているからこそすぐにヒステリーを起こしたり、自分の感情をコントロールできなくなってしまう。これも周囲を思い起こすとかなり当てはまる人の顔が思い浮かぶ。

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第二章 びびらない
/自分は何に対してびびっているのかを知る
会社に対してびびっている若い人
上司や会社の評価

/日本全体が大きな一つのムラ社会に
「同調圧力」ムラ社会
フェイスブックという表の世界では「いいね」を連発する紳士的な人物が、2ちゃんねるという裏の世界では他人を攻撃し悪態をつく人物に豹変する。二重性

/世の中はびびらせることで成り立っている
消費者を不安にさせることで商品を買わせる
手っ取り早いのが 不安を解消する為に商品を買わせる
不安になったりびびったりすると何が一番いけないか。冷静な判断が出来なくなってしまうのが一番良くない。

/状況を類推できれば恐怖心は消える
代理経験の重要さ
人から話を聞く
本や映画でもいい
分類とか類比 アナロジー

/自分の力を見極めることが先決
自分の力を知っておく必要
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この会社で生きていかなければいけないから、その為に出世の為の評価に傷がついたら困る。と思っているから上司にびびらなければいけない。そんなことよりも、この会社と馬が合わなくても、自分自身に職業人として十分に能力を高めていけば、他の会社、ひいて言えば、世界中どこでも自分を必要として、もっと評価してくれる場所があるはずである。つまりは、盲目的に上司にびびる様な時間があれば、自分の人生の進み方を明確にし、その為に今はどのような職業的能力を伸ばす時期なのかを把握していれば、びびることなく、それが成長に繋がる忠告なのか、それともただの怒りの表現なのかを理解し対処の仕方が分かりやすくなる。

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第三章 飾らない
/日本人に息づく“飾る”文化
きれいで美しいものに魅かれる
日本の文化は飾る文化
九鬼周造「いきの構造」
「いきとは全部言わずに一つ手前で止める事」
全部説明したら野暮になる

/「自分を大きくみせたい」という意識が利用される
自分を大きく見せたいというのは本能に近い。
「他人から評価されたい」「優越欲」

/『吾輩は猫である』に見る近代社会の「飾り」
競争社会が飾る事を促す
社会がフラット化
身分を越えて、自分を飾り立てる事はできません。江戸時代
福沢諭吉
身分に関係なく学問を修めたものが上にたって国や社会を引っ張っていく。
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一時的なプライドの為に、成長のチャンスを逃してしまう。それほど無駄な事はない。それよりも、自分が進む道を把握し、今の時点の自分の能力を把握し、自分が求めるプロフェッショナルにはどの様な能力が必要かを把握し、自分の立ち位置とその先に伸びる距離感を理解する。

その距離感を埋めるためにはどんな方法が一番効率的か。どんな人と付き合い、教えを乞い、どんな書物を読み、どんな経験をするのか。それを考えて時間を過ごすこと。

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第五章 断らない
/一ヶ月で原稿用紙1000枚書く力
とにかく忙しい。 ビジネスパーソン
会社はより少ない人員で、より高いパフォーマンスをあげるよう要求する。
「断らない力」
自分に負荷をかける
負荷をかけるほど鍛えられ思いがけないほど伸びる。

/上手に手を抜く、無駄を省く僕の方法
ポイントを掴む
求められているものが分かれば、無駄を省く事ができる
余計な事に時間をかけない

/明日できることは今日やらない
明日できる事は今日やら無い
危急の仕事とそうでない仕事を仕分ける事

/自分の世界に逃げ込まない
純粋培養的な「脆弱さ」が生まれる

/絶対に断らなければいけないこともある
自分の存在意義(リーゾンデートル」に直接関わる部分
児童ポルノ ドラッグ
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自分が思う限界は、実はそれほどきついものではなく、少し能力が高まれば意外と簡単にこなせるものであることもある。体調を崩すことなくという条件付で、できるだけ自分のハードルを勝手に設定することなく、特に若いうちはできるだけ自分を追い詰める。できない事が出来るようになることの一つの収穫は、できるようになった後に見える風景が変わっていること。そしてその時点からまた新たにできない事、つまりは学ぶ事が見えてきている事。同じ場所でぐるぐる回っているより、少しでも前に進み続けることが大切だろう。

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第六章 お金に振り回されない
/いくらあっても満足が得られないのがお金の本質
「限界効用避滅の法則」が当てはまらない
「満たされた」という感覚
欲望に際限が無い

/お金とは「人と人との関係」を具現化したもの
マルクスの「資本論」
お金は商品の交換から生じます
生活の基本にかかるお金
家族を養うお金
資本の論理は賃金を削る方向に傾きがち

/資本主義がそのエゴをむき出しにしてくる
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基本的にお金だけでなく、食欲、性欲などの人の欲というものは、すべて「限界効用避滅の法則」が当てはまらないのではないだろうか?ネットで様々な性的趣向が満足できる可能性が現れた現代だからこそ、本来は隠されていた人の欲望が解放されてしまい、際限の無い欲望の追求が行われているような気がする現代社会。

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第七章 あきらめない
/夢や目標をただの「執着」と区別する
「何に対して、どうあきらめないで頑張るのか」
適正
/目標は「終わり」がイメージできるものに

第八章 先送りしない
/できる人は「仕事の遠近感」を持っている
/人間は決断することを恐れている
/単なる“労働力”にならないために
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結局、自分に付加価値をつけていくことがびびらないことへの近道ということであろう。

地震にびびり、津波にびびった日本人。それを克服するには、その発生メカニズムと知り、発生した時の対処法を知り、どう行動するべきかを知る事。見えないものをできるだけ見えるものに変えていくこと。基本的にはそうして人は成長し、少しずつ恐怖や恐れを克服していく生き物なのだと理解しつつ、結局これといったヒントが無い今の自分のストレス対策を改めて考える事にする。


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■目次  
まえがき

第一章 怒らない
突然キレる人に理屈はない
怒りでフリーズさせることが必要な場面もある
よく怒鳴る上司の本当の狙い
鈴木宗男さんが役人に怒った本当の理由
本当に怖いのは“怒鳴らない人”
平気で嘘をつく人には大声で怒鳴る
事務作業のイージーミスほど致命的
立場が弱い人間を怒ってはいけない
自分の中の怒りの出所をはっきりさせる
よい物語で人生を疑似体験する
かつてないほどイライラが満ちている世の中
怒りは溜めずに昇華させてしまう
客観的なアドバイスをくれる人を身近に
512日間の勾留中、本当に頭にきた瞬間
【「怒らない」を考えるための本】

第二章 びびらない
外交の基本は相手をびびらせること
自分は何に対してびびっているのかを知る
日本全体が大きな一つのムラ社会に
人間はよくわからないもの、不可解なものに対してびびる
世の中はびびらせることで成り立っている
状況を類推できれば恐怖心は消える
時にはびびって逃げるべき場面もある
自分の力を見極めることが先決
日本人が本当にびびらなければならない相手とは
【「びびらない」を考えるための本】

第三章 飾らない
日本人に息づく“飾る”文化
相手との“自然な距離感”こそが重要
「自分を大きくみせたい」という意識が利用される
『吾輩は猫である』に見る近代社会の「飾り」
職場のハッタリは命とり
酒が飾りの下にある本当の姿を明らかにする
気難しいロシアの要人に認められたわけ
シンプルさを追求すると仕事も人間関係も楽になる
自分の“根っこ”はどこにあるか
【「飾らない」を考えるための本】

第四章 侮らない
一番得意な分野にこそ落とし穴がある
日常の些細な「侮り」で大きなツケを払うことも
自分の中の「侮り」に気づくには
悲劇的結末を招いた日本軍司令部の驕りと侮り
外務省は侮り人間の巣窟
組織の論理に染まらない
突然の「スローガン」には要注意
仕事に“メンテナンス”の意識を持つ
今こそ「畏れ」の気持ちをとり戻す
【「侮らない」を考えるための本】

第五章 断らない
一ヶ月で原稿用紙1000枚書く力
上手に手を抜く、無駄を省く僕の方法
明日できることは今日やらない
人間関係も「断らない力」で広げることができる
他人との差異を楽しむ
自分の世界に逃げ込まない
絶対に断らなければいけないこともある
リスクをどれだけ抱え込めるかで人生は変わってくる
【「断らない」を考えるための本】

第六章 お金に振り回されない
僕が講演を引き受けないわけ
いくらあっても満足が得られないのがお金の本質
お金とは「人と人との関係」を具現化したもの
お金が紙切れであることに気づく瞬間
巨額になるほどリアリティがなくなる
資本主義がそのエゴをむき出しにしてくる
自分の労働をいかに高く売るか
お金を受けとることで主従関係ができあがる
株もFXも投資ではなく投機
借金の仕方ひとつで人生を棒に振る
究極の個人情報である「信用情報」の恐ろしさ
【「お金に振り回されない」を考えるための本】

第七章 あきらめない
夢や目標をただの「執着」と区別する
出世を目標にして働くべきか
“ハマっている”のか“ハメられているのか”
目標は「終わり」がイメージできるものに
自分をマネジメントできるのは自分しかいない
過大な立身出世は近代以降の概念
検察との戦いで最後まであきらめなかった理由
【「あきらめない」を考えるための本】

第八章 先送りしない
仕事を先回りしてやりすぎるのは危険
できる人は「仕事の遠近感」を持っている
「時間割引率」で貯金の額がわかる
人間は決断することを恐れている
日本人から合理性が失われつつある
単なる“労働力”にならないために
『巨人の星』が好きな上司には要注意
誰にでも不祥事を起こす可能性はある
思考の硬さを意識的に柔らかくする
【「先送りしない」を考えるための本】
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