2013年12月20日金曜日

ストレス発散

北京生活の長いグラフィック・デザイナーの友人と久々に食事にでかける。

ストレスと過労から最近体調を崩されたと言う話から、「どうやってストレス発散をしているか?」という話に。

なんでもその方は、バブル絶頂時にグラフィック・デザイナーとして活躍し始めたので、忙しくて使う時間がなく、気がつくと相当な額の貯金が出来ていたという。ストレス発散の為に、通常1冊2万円などする洋書などの専門書を値段を見ることなく次から次へと購入する。服も好きなだけ買うなどし、ストレスを発散していたという。もちろんお酒もその一つだという。

「なにでストレスを発散してるんですか?」

と聞かれて、いろいろ考えてみるが、とてもじゃないがその方のような潤沢な収入が望める職業でもなく、一般書店で好きなだけ専門書を買うなんてもってのほか。文庫本ですら気が引けて、気になったものはメモを取り、アマゾンと近くのブックオフで調べてから購入するというなんともさもしい購買行動を取っていると説明すると、

「倹約家なんですね」

と言われるが、そうでもない。

こちらでは初乗りが200円ほどのタクシーも、できるだけ乗ることなくいつも電動スクーターで移動するのは、確かに節約と言う面もあるし、日本よりも高額なスターバックスのコーヒーなどは絶対に自分からは買おうと思わないのは、それが節約に繋がると言うよりもむしろ自分から見て、原価率などを考慮してそのものやサービスがその価格に合っているかどうかがより重要でありと思われる。

直に社会に向き合い、自分の行うサービスに対して報酬をいただくという生き方を長く続けていると、どれくらいの費用がかかり、どのくらいの労力がかかり、どれだけの報酬を得る事ができるかにとても敏感にならざるを得ない。

そんな中でできることは、必死に自らの職能を高め、そのサービスに意味と付加価値をつけて報酬をいただくことである。その額に納得してもらえるようになんとか自分の能力とサービスを向上させ続ける事でしか、この競争社会の中では生き残れない。それほど、競争社会の中で自分の職能で一万円でも対価を支払ってもらえるようになるのは大変なことである。

そういう風に時間を過ごすと、世の中の大抵のものの適正価格はなんとなく分かる様になってくる。どこで生産され、どういう風に運ばれてきて、どのような流通経路を経て、どれくらいの手間がかかりこの場所にあるのか。

そうして自ら想定する金額と、提供されている商品の金額が明らかに開きがあるのはやはりおかしいことである。それはどこかの段階で、誰かが多くのマージンを得ているとしか考えられない。

利益を上げるにに一番安易で楽なのは、マージンを多くかけて、原価率を低く抑えて利益を上げること。何かしらの付加価値をつけて価格を上げるならまだしも、競争原理の働かないような市場において、同じ商品に対して適正でない価格をつけること。

できるだけそういうものにはお金を払うことなく生きていきたいと願う。それは決して贅沢ではなく、ただただ適正ではない価格だから。その様に物事を見ていかないと、100円、1000円単位の施工会社からの見積もりに対して、シビアに要求を返せなくなってしまう。

だからタクシーに乗らないのは、タクシーを待つ時間の無駄も、つかまらないストレスも感じずに、自宅で充電をしておけば、後は少々寒いのさえ我慢すればタダで市内を行き来できる電動スクーターは現在のところ最上の移動手段だと思うからそうしているということをよく理解してもらえた。

これは適正価格に対する価値観の問題。

もう一つはバブル時代を生きた人に比べ、やはり我々世代は厳しい収入の世界で生きているし、どんなに頑張っても好きなだけ書店で本を選べる金銭感覚には到底ならないと思われる。しかも現在の様にアマゾン、ブックオフと様々な手段で同じ商品を手に出来る方法があり、ただただそれには手間がかかるだけであるなら、喜んで手間をかけ、より安く手に入れ、その代りより多くの良質な本に出会いたいものである。

これもよくよく理解してもらえたようである。で、戻ってくるのが「ストレス発散の方法」。お酒はたまに気持ちよく飲めればいい程度だし、服も靴も気に入ったものがあれば数年ずっと同じような格好でもかまわないし、夜のお店にはまるような性分でもないし、では何かと考える。

振り返るとやはりブックオフの100円コーナーで欲しかった本を見つけたときにはやはりある種ストレスが発散されているし、アマゾンで欲しい本を安く見つけ、うまい事組み合わせて発送料も安くやりくりすると喜びを感じている。そう考えると「本を買う事」と、「自分の思う適正価格でそれを手に入れること」が両方揃うと自分はストレスを発散するようである。


納得顔で聞いている横の妻に「何がストレス発散方法?」と聞いてみると、「旦那と話をすること」と楽しげに答えてくるが、普通は「倹約家の妻に浪費家の夫」という家庭が多いのに、我が家はどちらかといえば逆だな・・・と思いながらそのまま会話を続ける事にする。

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