2013年11月24日日曜日

コンサート 「Salzburg Mozart String Quartet」 NCPA 2013 ★★★★

ストリングス・カルテット(String Quartet)。

何度耳にしても記憶に留まらないこの言葉。どれだけ生活の中で音楽に馴染んでこなかったかを証明しているようであるが、この歳になっても新しく覚える言葉があるのはいい事だと思う。

さて、メンターに薦められて試しに聴きに行く事にした今日のコンサート。ストリングス・カルテット(String Quartet)とは「弦楽四重奏」を意味するらしく、ヴァイオリンとその仲間の楽器計4本を使って演奏される合奏形態を意味すると言う。詳しくは2本のヴァイオリンと、ヴィオラ、そしてチェロという構成らしい。

幾つかの異なった楽器がそれぞれのパートを演奏しながら一つの曲を構成していくのでオーケストラの奏でる交響曲の小さいものかと勝手に想像するが、やはり交響曲と弦楽四重奏は作曲家の重要ジャンルとなっているらしい。

そして今日の音楽家はSalzburg Mozarteum Quartetといい、オーストリアのストリングス・カルテットだという。その構成は以下の通り。

First Violin; Markus Tomasi
Violin; Milan Radic
Cello; Marcus Porget
Viola; Geza Rhomberg

そしてプログラムはモーツァルト、メンデルスゾーンにドヴォルザーク。演奏の中で日本のテレビCMでも使われてて、耳に馴染みのあるフレーズが何度も聴こえてくる。

メンターが「ストリングス・カルテットはコンサートの中でも一番知的で建築的だ。オーケストラだと量がありすぎて、個が見えないが、ストリングス・カルテットでは一つ一つの楽器の音が埋もれることなく際立って見えるからいいんだ」といっていたように、4つの楽器がそれぞれに異なった動きをしながらも、しっかりと調和と取りながら、そしてある時には共鳴するかのように同じ旋律を重厚に響かせる。その緊張と緩和。とても素晴らしい。

どうも生の良質な音楽に晒されてこなかった自分の脳は、ヴァイオリンなどが発するアルファ波に抗体が無いらしく、開始早々抵抗することが出来ないくらいの睡魔に襲われ、身体をダラリと緩和させ、同じく脳も弛緩させ、ウツラウツラとモーツァルトの調べの中に落ちていく。

かつてCDもテープも無い次代に音楽を聴くというのは、まさにこの調べを聴けるのは一生に一度しかないかの機会だったに違いない。そんな時は観客は相当な集中力を持って音楽家の発する音に向かっていたに違いない。

そんな中で貴族や王族だけが、その特権を利用し、有能な音楽家を宮廷に呼んでは夜な夜な極上の調べに身体を浸していたのだろう。その余裕があるからこそ、ゆったりと身体をリラックスさせ、音楽をしっかりと脳に届ける事ができたに違いない。そう考えるとこうしてアルファ波にやられて、ウツラウツラすることは、当時の特権階級のみに揺るされた高度な文化行為だったに違いないと自己正当化をしながら更に深い眠りに。

そんなことんなをしていると一曲目が終わったようで、観客の拍手と共にカルテットがバックステージに消えてまた出てくる。音楽を聴いているとすっかり時間の感覚がなくなるので、「ひょっとして既に幕間・・・?」と思ってしまうが、どうやら二曲目が始まるらしい。

二曲目のドヴォルザークを聴きながら、まだまだ脳がアルファ波を欲しているらしく、再び深い睡魔に誘われる。弛緩しきった視界の先では会場の4分の3ほど埋めている観客を捕らえる。その数およそ1000人。日曜の夜に様々な誘惑がある都会の生活にも関わらず、アルファ波に誘われるようにしてあつまる蝶の様に、これだけの人が自らの意思でここに足を運んでいる。それは凄い事だと改めて思う。

自分の様にこの歳になるまで、自分の意思でこうしてコンサートやオペラなどに積極的に足を運ぼうとしなかった文化的なアンテナの低い人間にとってはまったく意味を成さない場であるこのオペラハウス。しかし、これだけの人がその豊かな時間を身を持って知っており、どういう楽しみ方をするのか理解し、そしてまた足を運んでくる。

そう思うと同時に、今まで出合っていたその様な文化的教養の高い人たちの前で、文化的素養の無さを晒していたのかと思うとかなりゾッとするのと同時に、彼らが無知な自分を目の前にしても優しく接してくれていた事に感謝する。

一日に一度十分にアルファ波を吸収したら脳もお腹一杯のようで、後半はすっかりクリアになった頭で集中して音楽を聴き、音楽家の動きを眺めてすっかりストリングス・カルテットが好きになったとメンター夫妻に報告する。

「締切りがあるので、チームの進行状況を確認しにオフィスに戻らなければいけない」と言うと、「なんて非人間的な仕事のやり方をしているんだ・・・」とメンター夫妻。「しかし、それが戦う建築家の日常なんです・・・」としか言えず、「あまり無理せずに」という言葉を背中に受けながら、今年最後になる来週のオペラに思いを馳せてオフィスに戻る事にする。

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Programme
W.A. Mozart; String Quartet in D Major K575
Mendelssohn Bartholdy; String Quartet E Flat Major op. 12

Intermission
A. Dvorak; String Quartet in F-Major op. 98 "American"
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