2011年1月21日金曜日

「ソーシャル・ネットワーク」 デビッド・フィンチャー 2010 ★★★

極東の国ではネットが受験に不正使用され、中東ではネットを使っての革命の勢いが止まらない。

そんな現代を代表するのが世界最大のソーシャルネットワーキング、つまりSNSとなったFacebook。その若き創設者マーク・ザッカーバーグの半生を描いた映画ということでとにかく話題になっている一作。

あのデビッド・フィンチャーがメガホンを取ったことでも話題だが、なんと言ってもまだ現在進行形の一会社の社長の半生がすでに映画化されるということで、その創造力によって世界にもたらされた世界への影響力を物語っているかのようである。

ハーバード大学在学中の主人公が、好きな女の子の興味を引くために特異なプログラミングで学生同士のソーシャル・サイトを開設するところから始まる。何ごろのきっかけは、「もてたい」という根源的な欲望から。

そして「知ってる人の写真だから興味がある」という「知り合いの知り合い」という繋がり感が爆発的に受け、あっという間に急成長をし、ファイル共有サイト「ナップスター」創設者であるショーン・パーカーとの出会いを経て、社会現象を巻き起こすほどの巨大サイトへと急成長するなかでの、摩擦や葛藤を描きながら物語は展開する。

ハーバードというアメリカを代表するアイビー・リーグの伝統が良く描かれているのも楽しめる。フラタニティとソロリティという男子・女子学生サークルによって護られるエリート主義。イエール大学出身のパートナーは構内でKKKのサークルも見かけたことがあるといっていたが、やはりどんなところでも若者は気の会う一生の仲間を見つけていくものであろう。

見終えて感じる少なからぬ危険性。

何かを成し遂げる人は目的がお金じゃなく、ただやりたいから我武者羅にやっているのが、結果的に抜き出ている。毎日、毎時間、ずっとそのことばかりを考えてる。毎日やらなければいけないこと、こなさなければいけないこと、そんなことは考えない。

そういう生き方が出来るのは、ある種の才能を持った人間だから。その準備ができている人だから。

そうではなく、向上するために緊張感を持ってではなく、ただただ惰性と共に日常を過ごしている人間も同じく、「自分もこういうまっすぐな生き方ができるのかも」と思い始めたら、この社会は成り立たない。

創造的活動には、それを支える経済という下部構造が必要だとマルクスも言うように、自由な創造活動を行うためには、その為の下地が必要で、大学というのはまさにその時間的余裕を与えてくれるところ。生きることに必死になって過ごす必要は無く、自分のやりたいことに必死になって向き合う時間。

それが本来の大学のあるべき姿なのだろうと思わずにいられない。それに比べ日本の大学の風景といったら、社会という砂漠にでるまでの猶予期間としてカウント・ダウンされる時間を貪るように刹那的に生きる。

SNSの中で退屈な日常に手を加えて知り合いの知り合いに「素敵な一日だね」と言われて喜ぶような今を過ごすのではなく、今の自分のやれることを必死になって過ごすことが大切なのだと矛盾を孕みながらも突きつけられるような一作であろう。
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スタッフ
監督 デビッド・フィンチャー

キャスト
ジェシー・アイゼンバーグ;マーク・ザッカーバーグ
アンドリュー・ガーフィールド;エドゥアルド・サベリン
ジャスティン・ティンバーレイク;ショーン・パーカー
ジョセフ・マッゼロ;ダスティン・モスコヴィッツ
ルーニー・マーラ;エリカ
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作品データ
原題 The Social Network
製作年 2010年
製作国 アメリカ
配給 ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
上映時間 120分
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