2012年4月21日土曜日

一本のシャーペン

オフィスで身の回りの文具系をカスタマイゼーションしていたら、家で中国語を勉強する文具が足りなくなった・・・

慣れしたしんだシャーペンじゃないとしっくりこないし、長時間書くには疲れてしまうのでできるだけ似たものがないかと近くの京客隆へ足を運ぶが、スーパーだけあって、ろくなものがおいてない。これかな?と思って買ったものは案の定シャーペンではなく普通のボールペン・・・

「確か無印が中国へ進出していたはず・・・」と思い立ち、グーグル・マップで検索するといくつか店舗がありあそうだ。しっくり来るものがあれば、そんな高いものでもないだろうから幾つか買いだめしておこうと、妻を誘い二人で砂塵舞う中、マスク装着し自転車で出発。

そろそろ慣れてきた百度地图で「MUJI」と入力し、自宅から最短距離である世贸天阶へ。敷地内に自転車で入ろうとすると、警備員が飛んできて、「とにかく中には入ってはダメ」と言い、どこか外へ止めてきてくれと。しぶしぶ近くの路肩に停車し、地図を探すが、こちらのモールではサイン計画がまだまだ不十分プラス、インフォメーションセンターもどこにあるか分からないので、どこかの店に入って店員に聞くのだが、彼らも自分たち以外の店舗を把握しておこうというホスピタリティがある訳もなく、「確かあったはずだけど、南側の建物だと思うよ」という言葉を信じて行くが、結局見つからず。

訳が分からないがまた地図で表示される次の店舗に電話してみると、その店舗は無くなったとか。しょうがないので、その次に近い場所はと聞くと、华贸购物中心の3階だというので、昨晩日本からの友達を迎えにいった新光天地へと再度自転車を飛ばす。

がその道中、妻の自転車のブレーキが千切れる。ブレーキを落とさないようにと必死につかみながら、マスクとサングラスで顔の大部分が隠されながら自転車をこぐ妻。案の定勝手な場所に自転車を駐車してはいけないと言われ、グルッと前面道路まで移動させられ、ひーひー言いながらやっとのことで無印良品到着。

馴染みのシャーペンに近い形のものを見つけ手に取ると、46元。換金レートを15円/1円と設定している我々にとってはおよそ700円という高額に二人そろって愕然・・・日本での値段を見てみると470円ほど。こりゃ何本か買いだめどころの話ではない。いくら製図用のシャープペンシルで、使い心地がよいと言っても、シャーペンであることに変わりは無く、しかも中国マーケットを睨んだ料金設定であるはず。

その値段を見ながら日本企業の想定する中国マーケットの相場観と、自分たちの適正価格の大きな乖離を感じ、それでもここまできたのだからと、たった一本のシャーペンを握り会計へ向かいながらここまでの道のりを振り返り、言葉が不自由であるからこそ、情報収集も不自由になり、それが身体への苦痛として巡って来ることを実感。

たった一本のシャーペンだけど、これで出来るだけの勉強をし、自由な言語と自由な身体を手に入れることでしか、この対価は支払われないのだろうと心に誓う。

帰りがてら、道の片隅でパラソルを広げ、その下のワゴンに「修」と書いて修理屋を展開している夫婦のところにブレーキの壊れた妻の自転車を持っていくと、「ブレーキが切れたんかい?」と言ってさっさと直しだす奥さん。

上手くいかないので夫に変わり、油で真っ黒に染まった手で、箱の中から合いそうな金物を探り出してはせっせと直すが、最後の最後でブレーキを引いた後の戻りが納得いかないらしく、どうするのかな?と見ていたら一番最初からやり直し。

「ほぅ」と感心していると、「なおった」と自転車を渡されてその夫はさっさと次の自転車へ。

「お金は?」と奥さんに聞いてやっと、「金物だけだから5元」と。

きっと太陽が落ちてきたらワゴンを片付け、パラソルを片付け家に帰り、今日また染み付いた油を落として料理を作り、ビールでも飲みながら笑って今日一日を終えていくのだろうと想像する。

誰かに嫉みなど感じる必要もなく、自分たちが生きる場所と、自分たちが幸せになれる毎日の過ごし方を知っている。きっとそういうことなんだろうと妻と話しながら家路に着く。

動かした手は裏切らない。きっとそういうことなんだろう。



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